【第13回 献立・調理コンクールレポート】「世田谷記念病院」「堺平成病院」が1位を獲得しました!
平成医療福祉グループは、グループ病院・施設で提供する食事の献立・調理の質向上を目的として、各病院・施設の代表者2名(管理栄養士〔または栄養士〕・調理師〔または調理補助〕)が、テーマに沿ってオリジナルの献立で腕を競う「献立・調理コンクール」を関東エリアと関西・中四国エリアに分けて、毎年開催しています。
2024年度の第13回「献立・調理コンクール」は、関東エリア決勝を10月16日(水)に「府中市市民活動センタープラッツ」(東京都府中市)で、関西・中四国エリア決勝を10月29日(火)に「ふたば学舎」(兵庫県神戸市)にて実施しました。
厳しい審査を経て、関東エリアからは「世田谷記念病院」が、関西・中四国エリアからは「堺平成病院」が1位に選ばれました!
決勝当日の様子とともに、1位を獲得した出場者の声や審査員の講評などをお伝えします!
今年のテーマは「パンが主役の献立」
「献立・調理コンクール」では毎年テーマを設定しています。今年のテーマは「パンが主役の献立」です。現在、パンは主にグループ内の「朝食」に提供されていますが、年に数回、昼食にも登場します。その際、患者さんや利用者さん、職員からも「パンをもっと出してほしい」という声が多く寄せられ、人気を集めていました。
しかし、パンを主食にした献立は、栄養バランスの調整やコスト面で難しさがあり、献立がなかなか増やせない状況でした。そこで、栄養部が「コンクールでみんなに新しい献立を考案してもらったらおもしろいのではないか?」と考え、今回のテーマが決まりました。
このテーマをもとに、グループ全病院・施設の栄養部の職員が各々独自で献立を考え、まずは書類審査による予選を実施しました。そのなかから選出された関東と関西・中四国のそれぞれの上位5施設(計10施設)が、エリアごとの1位を決める決勝に進みました!
決勝は関東と関西・中四国の各会場で開催され、全組が同時にその場で、審査員を目の前にして調理を実施しました。
審査は、各料理の味はもちろんこと、見た目(盛りつけ)の良さや、調理工程における手際、チームワーク、さらに試食前のプレゼンテーションなども含めて評価が行われます。
なお、両会場で2位までに入賞した献立は、グループ内で実際の献立として採用され、全国のグループ病院・施設での食事として提供されます。そのため、現場での大量調理が可能となるか、食材の調達が容易であるか、という観点も審査に含まれます。
関東と関西・中四国エリア
それぞれの1位獲得者の声
〈関東エリア 1位:世田谷記念病院〉
審査の結果、関東エリアでは「世田谷記念病院」が1位に輝きました。世田谷記念病院は「カフェ風サンドイッチランチ」をテーマにしたメニューを考案しました。2位のケアホーム船橋「大満足!進化したレトロランチ」と僅差の得票数でしたが、「栄養・味・構成すべてのバランスが見事」だと評価されて勝ち抜きました。
献立の考案にあたり、患者さんと職員との両方にアンケートを取ったという世田谷記念病院。その理由と、アンケートをどのように生かしたかについて、管理栄養士の大貫 文菜さんが次のように話しました。
「私たちのグループでは、患者さんと職員が同じ食事を食べているということが特長の一つに挙げられます。だからこそ、アンケートを取って双方が『食べたい』と思えるものを提供できたらいいなと思いました。
アンケートの結果は『サンドイッチ』が1位でした。サンドイッチといえば、三角形の形状を想像する方が多いと思いますが、見た目からより楽しめるよう、カフェで提供されるような食事を目指し、カスクート(※)を考えました。カスクートと言っても、フランスパンだと堅いので、柔らかなパンを使用して、だれでも食べやすくなるように工夫しました」
※フランスパン全般を使ったサンドイッチを指し、バゲットにハムやチーズなどの具材を挟んだものが一般的です。
続いて、調理ポイントで難しかった点について、調理補助の岩井 むつみさんが話しました。
「パンに挟むチーズを、程よくとろけさせるのが難しく、試作を重ねました。バジルソースをきれいに見せることも工夫し、ミキサーを使用するとペースト状になりにくいため、すり鉢を使用してペースト状にしました。副菜のグリル野菜も食べやすい厚さを目指しましたが、厚すぎると患者さんが食べにくく、薄すぎるとへたってしまうので、ちょうどよい厚さに仕上げるまで苦労しました」
2年前の調理コンクールで世田谷記念病院は1位を獲得していたため、「今回は多少プレッシャーを感じての参加だった」という大貫さんと岩井さん。1位受賞を経験した先輩たちのアドバイスを受け、施設の栄養部職員たちに何度も試食して意見を出してもらい、練習を重ねて当日に臨んだそうです。二人とも「コンクールがあることで、自分たちのスキルアップにつながるし、向上心も湧く。そして何より、自分たちで考えた献立が患者さんに届くということが、モチベ―ションにもなります」とコンクール出場の醍醐味を伝えました。
〈関西・中四国エリア 1位:堺平成病院〉
関西・中四国エリアで1位を獲得した「堺平成病院」のメニューは「パッと華やか! 洋風ランチ」です。鮮やかな見た目と味わいに加え、ユニークなプレゼンテーションでも高評価を得ました。
決勝進出自体が初めてだったという堺平成病院は、病院栄養部の常勤職員全員が一つずつメニューを発案し、そのなかから施設内で1位を獲得したメニューで挑んだとのこと。職員全員で取り組んだことについて、管理栄養士の武藤 達也さんは次のように話しました。
「みんなで選んだメニューを、決勝用に仕上げるために、申し込み期日のぎりぎりまで全員で試行錯誤しました。当初、冷製パスタにはサーモンではなくマグロを使用していましたが、カロリー計算や予算が合わなかったので、変更しました。さまざまなアイデアを出し合って、本当に❝みんな❞で作ったメニューだと思います」
調理で苦労した点については、調理師の宮本 智和さんが話しました。
「デザートのコーヒーゼリーは、コーヒーと牛乳の2層のゼリーとし、色彩のコントラストをきれいに見せようとしましたが、上層部分を真白にするのに手間取りました。流し込む時の温度が重要で、今日も少し苦戦しました。それから、今年フードマイスター(※)を獲得したのですが、それを事前に伝えるとプレッシャーがかかるので、言わないようにしていました(笑)」
※グループ栄養部が設けた、「オリジナルライセンス制度」で、五つのライセンス項目(実技試験:魚の下処理、寿司、ケーキ作りなど)をすべて合格した人に与えられる称号。
https://note.hmw.gr.jp/n/na51932a9c3d2
自分たちで考えたメニューを患者さんへ提供できることについて、二人は「コンクールメニューは患者さんたちにとても人気があるから、自分たちのメニューが提供できることが本当にうれしいです」と話しました。また、「食べる前に見た目から楽しんでいただき、口にして、さらに味わいを堪能してほしい」というメッセージも述べました。
審査員の声
両会場には、各病院・施設から複数の審査員が参加し、誰もが口を揃えて「どれもおいしくて、順位をつけるのが難しかった」と述べました。審査員のなかから、武久 洋三会長と堤 亮介栄養部部長の講評を紹介します。
武久 洋三会長
「グループの設立以来、私たちは『食事』を大事にしてきました。当初から、患者さんがおいしいと感じてしっかり食べて栄養をつけ、病気を克服するためなら、食事の予算をオーバーしてもいいとみんなに伝えてきました。今回、コンクールに進出した食事は、設立当初に比べるとレベルがとても上がっています。パンをテーマに、実に多彩なメニューを考え出したなと感心しました。
料理は、おいしさはもちろんですが、食欲が湧くような見た目も大事です。加えてプレゼンテーションに見られたような、メニューの栄養ポイントを魅力的に伝えるところまでが、食に携わる人たちに必要な能力だと感じました。栄養部のみなさんも都合がつく時は、ぜひ病棟などへ出て患者さんに食の重要性をアピールしてください。本日改めて、食の大切さを再認識しました」
堤 亮介栄養部部長
「コンクールの回を重ねるごとに、管理栄養士と調理師の連携が高まっているなと感じています。特に、プレゼンテーションは、これまで管理栄養士がメインに話す場合が多かったものの、今回は調理師がメインになって発表するというシーンが多く見られました。栄養部では今、『厨房では調理師が中心となって安全でおいしい食事を提供し、病棟では管理栄養士が患者さんの栄養管理を行う』という職種ごとの役割分担を大切にしながら、より良く連携する栄養管理を目指していますが、その目標とする形が、ここで少し見られたかなと感じました。
今回選ばれた上位の献立は各病院・施設で提供されます。コンクールで出されたものと同じ質で出せるよう、栄養部みんなで協力して努めたいと思います」
第13回 献立・調理コンクール結果
各エリアにおける結果は、以下の通りです。両会場で2位までに入賞した献立が、実際に食事としてグループ病院・施設で提供されます。
【関東エリア】
1位 世田谷記念病院(東京都世田谷区) 「カフェ風サンドイッチランチ」
〈献立ポイント〉
カフェでのランチ気分が味わえるようカスクートにし、色合いが良い組み合わせで食材を選んで、見た目からも楽しめる献立となるよう意識しました。
2位
ケアホーム船橋(千葉県船橋市) 「大満足!進化したレトロランチ」
〈献立ポイント〉
喫茶店で楽しく食すイメージで献立を考案。多くの人に好まれる卵サンドにはたくあんを使用し、卵のとろみとたくあんのポリッとした異なる食感の組み合わせをポイントにしました。あんぱんにはコーヒーを混ぜて喫茶店のイメージを高めました。副菜やスープには色とりどりの食材を使用し、見た目も楽しくお腹も満たせる内容を目指しました。
3位
緑成会病院(東京都小平市) 「卵焼きパン ~和食に新しさを~」
4位
ヴィラ泉(神奈川県横浜市泉区) 「地元の食をアピールしたい! こだわりの神奈川ホームタウンセット」
5位
ヴィラ南本宿(神奈川県横浜市旭区) 「挟んで! つけて! スパイス香るトルコ料理」
【関西・中四国エリア】
1位 堺平成病院(大阪府堺市中区) 「パッと華やか!洋風ランチ」
〈献立ポイント〉
「食が細くなった方にも、食事から元気を与えたい」という想いから、視覚的に楽しめるよう豊かな色彩に気を配り、食欲を増進させ、食事の満足度が高められる献立を目指しました。
2位 ケアハウス 東浦エルベ(兵庫県淡路市) 「和洋折衷!ふわふわドッグのランチ」
〈献立ポイント〉
利用者さんの多くは和食が好きで、やわらかいパンも好きなので、和と洋を組み合わせた献立を考えました。旬の食材を生かしつつ、やわらかなパンに合うよう具材の配分にこだわりました。食べ慣れた和食をベースとして、洋食の要素をバランス良く組み合わせています。
3位 西宮回生病院(兵庫県西宮市) 「冬の彩りカフェランチ」
同率3位 ヴィラ羽ノ浦(徳島県阿南市) 「昔懐かし!!みんな大好きな給食メニュー」
5位 泉佐野優人会病院(大阪府泉佐野市) 「五輪カラーで食欲アップランチ」
次回の献立・調理コンクールはもちろん、今後の当グループの栄養部の取り組みにも、ぜひご期待ください!
グループ栄養部では、患者さん・利用者さんはもちろん、職員も同じメニューをおいしく食べることを促進する「おいしいをみんなのものにプロジェクト」を実施中!
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