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グループ栄養部の取り組み紹介 Vol.2「調理師オリジナルライセンス制度」とは!

平成医療福祉グループでは、ミッション「じぶんを生きる を みんなのものに」を掲げています。ミッションを実現するための行動指針(アクション)の一つに「スタッフの専門性を拡張しチームで成長し続ける」(※)があります。

今回、このACTIONに沿って、多職種で協力し、チーム医療の質の向上を目指す取り組みの一環として、専門人材の育成を促進する取り組みを、グループ栄養部からご紹介します。

患者さん・利用者さんに適切で、よりおいしい食事を提供するための取り組みの一例として、2017年度より始まった「調理師オリジナルライセンス制度」について、その詳細をお届けします。

※グループサイト参照


「調理師オリジナルライセンス制度」とは

「調理師オリジナルライセンス制度」は、調理師の技術と意欲を向上させることはもちろん、患者さんや利用者さんへ、よりおいしく質の高い“食”の提供を目的として設けられました。本制度では次の5つのライセンスを設定し、毎年2回の実技試験を実施しています(※1)。

5つのライセンス項目
・タイムトライアル(※2)
・デザート(ケーキ作り)
・魚の下処理
・卵料理
・寿司

今年で開催5年目となる本制度の、グループでの役割や、スタッフが参加する意義などについて、栄養部の堤 亮介課長と世田谷記念病院の上野 嘉弘料理長(以降、堤さん、上野さん)に話を聞きました。

※1 新型コロナウイルス感染拡大予防のため、2020年度は未実施。2021年度は1回のみ実施。
※2 天ぷら、肉じゃが、かきたま汁を規定の時間内で作成。その完成度や技術、作業スピードを測ります。


調理の技術はもちろん、料理人としてのモチベーションを高めるために

「オリジナルライセンス制度」の実技試験は、毎年関東、関西、徳島にエリアを分けて実施。グループの病院・施設で働く調理師の中から、希望者が参加しています。当グループが独自で考えた制度導入の経緯や、これまでの成果について、堤さんに教えてもらいました。

栄養部 堤 亮介課長。

「本制度の最終的な目標は、利用者さん・患者さんへの、よりおいしい食の提供です。それに加え、グループに所属する調理師のみなさんが、より高いモチベーションを持って日々働けることを目的とした『調理師の待遇改善』も考慮して、この制度を設けました。
この制度を取り入れるまで、調理師の仕事を、客観的にどう評価するべきか、各病院・施設の事務長や施設長、料理長たちと話し合っていました。そもそも一般的に厨房の職員を評価する基準というものが存在しておらず、評価の仕方に難点があったんです。そこで、グループ独自で『資格を作ってみてはどうか』ということになりました。
オリジナルの資格を取得するための試験には、当グループの調理の特長を盛り込むことにしました。実際に手焼きで提供する卵焼きや、生で納品される魚をさばくことが上手にできるか、などのポイントを挙げて、5項目の試験に昇華させたんです。さらに、通常の業務の延長だけでは物足りないため、レベルを一段上げた内容を取り入れて、現在の実技試験の形を作り上げました」

5項目の試験は、厳格な審査基準が設けられているため、どれもこれまでの合格率が20%以下(※)と、難関です。しかし待遇改善を掲げているだけあり、合格すれば、その評価はしっかりと反映され、1ライセンスにつき5,000円の手当が給与に付加されることとなります。また、すべての項目に合格すると、その証として「マイスターエプロン」が授与されます。現在、グループでは10人がマイスターエプロンを取得しました。

「現在、さらにライセンスを増やすことも考えています。例えば次のステップとして衛生面についての知識を確実に身に着けてもらうためにペーパーテストの追加も検討しています。また、さらに上級者向けの試験を作るなど、みなさんの意欲を駆り立てる内容を考えています」

※ 5項目すべての通算合格率として17.7%

試験会場での調理の様子。
マイスターエプロン取得者。※今回の実技試験で撮影されたものではありません。


試験会場は見識と交流を広げる絶好の場所

栄養部で、試験対策として動画の教材を製作したこともあり、本制度は回を重ねるごとに周知を広げ、職員の間で根づいていきました。

「合格を目指して参加する試験ではありますが、試験会場は調理スタッフにとって大事なコミュニケーションの場にもなっています。審査員からの指導を楽しみにしている人もいますし、他施設のスタッフとの情報交換や施設見学の調整などもさかんに行われ、年々活気のある雰囲気になっています。医療・福祉の現場における調理師として、見識が広がる良い場だと思いますね」

今回、この試験を初回から受け続け、初めてライセンスを一つ取得した人もいるとのこと。本制度を介した職員の成長は、運営側にとっても喜ばしいそうです。

「参加を重ねて、着実に技術を身に着けていく姿が見られるのは、とても嬉しいですね。合格率からいっても、1回で合格するのはとても難しい。だからこそ、これから受験を検討しているスタッフは、まずは一度参加していただきたいです。ここで審査員の指導を受ければ、自分の苦手な点が明確になるでしょう。どうしたら技術が向上するかを掴むことで、合格の道が開けると思います」


合格に向けて練習あるのみ。現場で生かせる技術の習得を

実技試験で審査を担当する職員の一人、上野さんは、初回から試験会場で参加者の調理をチェックしています。最後に完成した料理の盛り付け・味付けを確認して、一人ひとりに合否を発表する瞬間は参加者にとっては緊張の場面。しかし同時に伝えられる丁寧なアドバイスは、今後のスキルアップに欠かせない貴重なものです。

向上心を持って参加する調理師のみなさんに向けて、実技試験に臨む際の心構えや大事にしてほしいポイントなどを教えてもらいました。

世田谷記念病院 上野 嘉弘料理長。

「何より、日ごろから練習をしていないと、合格にはつながりません。練習が不足している人は会場ですぐにわかります。手順が悪く、見本の写真が理解できていないので盛り付けもうまくできないんですね。十分に練習している人は、手際も盛り付けも違います。
また、練習を重ねている人ほど、こちらのアドバイスを真剣に受け止めるケースが多いですね。例えば今回の参加者のなかにも、こちらが指摘した点を研究してきた人がいました。その人は前回試験のタイムトライアルにおける課題の一つ『かき玉汁』で、“とろみ”に難点があり、卵をふんわりと仕上げられなかったんです。その点を伝えたところ、今回は対策を練って、片栗粉の分量をきっちりと計ることを徹底し、合格につながりました。こうした向上心は素晴らしいと思います。
こちらとしても基準に沿って採点し、合否を伝えていますが、それだけではなく一人ひとりが次のステップにつなげられるようなアドバイスを心がけています」

調理中の様子も厳正に審査されます。
評価基準は各項目ごとに複数設けられています。写真はデザート(ケーキ)の採点基準の一つ「デコレーション前のスポンジの高さが4.5cm以上あること」を確認する様子。
卵料理の採点基準の一つ「錦糸卵の細さは2mm以内で揃っていること」を確認する様子。

実技試験は、普段働いている施設や病院の厨房とは違い、審査の目に囲まれるなかでの調理となるため、緊張感のある空気に飲まれてしまう人もいるそうです。

「周りが気になって、手元が震えてしまう人もいますね。緊張すると練習の成果が発揮できないので非常にもったいないです。場の雰囲気に慣れることも大事なので、緊張しやすい方は参加回数を重ねるとよいでしょう。
しかしやはり、たくさん練習することが当日の実力発揮につながります。動画教材も駆使してトライしながら、自分なりにどうすれば上手にできるかを考え、繰り返し練習してください。わからないことがあれば料理長などに相談しましょう。実行すれば、おのずと上達すると思います。
いずれも、ゴールは利用者さん・患者さんにおいしい食を楽しんでいただくことです。実技試験で培った技術を現場に還元できるよう、審査する私たちも指導していきたいと思います」

審査員が集まり、完成した料理をチェックする様子。
各実技試験の最後に、審査員から一人ひとりへ、合否とともに細やかなアドバイスが伝えられます。


狭き門を突破した合格者の声

今年度、グループの各エリアで実施された調理師オリジナルライセンス試験では、総受験者数94名(試験受験数:184試験)のうち、32名(試験合格数:37件)が合格となりました。

最後に、関東での試験会場で実技試験に合格した参加者の声を紹介いたします。

ヴィラ都築 阿部杏梨さん
初回から参加し、複数のライセンスを取得していますが、今回は卵料理に合格しました。私は実技試験の緊張感を好む方なので、挑戦することはモチベーションアップにつながっています。また、参加して身に着けた技術は現場でも生かされています。過去にライセンスを取得した「デザート」ではケーキ作りが上達したおかげで、施設の利用者さんからリクエストをいただけるようになりました。

阿部さん

当グループでは、栄養はもちろん、おいしさも追求した“食”を提供しています。

栄養部の取り組みについて、ぜひこちらもご覧ください。

栄養部の取り組み紹介 Vol.1「ベスト盛り付け賞」とは!
【前編】【後編】