【障がい者支援施設PALETTE】多彩な個性が混ざり合う「PALETTE展 Vol.1」の魅力
平成医療福祉グループが運営する障がい者支援施設「PALETTE」(大阪府大阪市淀川区)では、4F印刷工房のアトリエで活動されるみなさんが手がけた絵画作品を中心とする展示会と、過去の限定商品などを販売するサンプル市を2022年夏に同時開催しました。今回、「PALETTE展 Vol.1」の特長や、作家や職員のものづくりにかける想いなどを、施設長の嶋岡 真人さんに伺った話をもとに、お伝えします。
展示会第1弾は、PALETTEのものづくりを「ありのまま」に伝えたい
2019年に活動を始めたPALETTEは、一人ひとりの個性を生かせる「ものづくりの場」です。PALETTEでは、施設に通う利用者さんたちが、ものづくりを介して「好きなこと」を見つけ、それを追求するための環境を整えています。
「PALETTE展 Vol.1」では、印刷工房のアトリエで活動される利用者さん全員が手がけた、開設当初からの作品が出展されました。
これまでの活動をできるだけダイレクトにお伝えしたいという想いから、あえてコンセプトを設けない展示会とした旨を、施設長の嶋岡さんに伺いました。
※以下、「」内の発言はすべて嶋岡さん
「展示作品は、作家(利用者さん)自身が好きな作品や、職員が思い入れのあるもの、そして人気商品の原画となったものなど、さまざまにセレクトしました。同じテーマで描いたわけではなく、テイストもモチーフも人それぞれ違うため、たくさんの要素が入り混じっていますが、これがPALETTEの理念に通じる『たくさんの個性の色が混ざり合う』姿でもあります。そういう意味では、PALETTEの活動や、印刷工房に通う作家一人ひとりの、その人らしさをありのままにお伝えできるのではないかと思います」
展示の方法として、一部、作品のバックに白地の木材を引いていますが、これは普段の工房内の様子を反映したのだそうです。
「工房では、自分の作品をほかの作家に見せる機会を設けており、その日に制作できた作品をホワイトボードに貼り出しています。一同に会した作品をみんなで眺めながら『これおもしろい、私も描きたい!』というような会話が交わされて、創作意欲を高め合うひとときを過ごしているんです。そうした、工房の普段の雰囲気も感じていただけたらいいなと思いますね」
作家と職員の「挑戦」が、ものづくりを進化させる
印刷工房の作家たちの多くは、もともと絵を描くことやデザインに高い関心を持っていますが、職員と一緒に進めるプログラムや、仲間同士で刺激を与え合う時間を重ねるうちに、ほとんどの方が創作にかける想いを、さらに高めていくのだそうです。
職員は、作家たちの向上心から、大きな影響を受けているのだと嶋岡さんは話します。
「私たち職員が、一人ひとりに合った関わり方や制作の提案を行ううちに、作家自らが新しいことに挑戦する姿勢が多く見られるようになりました。例えば『こういう商品を作りたい』とか『こんな展示会をやりたい』というアイデアを発したり、もともと高い技術を持つ方でも、新たな作風にチャレンジしたりと、みなさん自発的に次のステージへと進んでいくんですね。こうした姿から、職員が学ばせてもらうことも多くて、自分たちも今やっていることだけに満足してはいけないなと考えさせられます」
豊かな発想と個性に満ちた作品をご紹介
PALETTEではみんなが「挑戦」を一つの指針として活動しているとのことで、制作の現場はいつも活気に満ちているそうです。
どの展示作品からも、作家が意欲的に取り組んだ様子や鮮烈な個性が感じられますが、今回はその一部を、ピックアップしてご紹介します。
アクションペインティングの手法を用いた大型の抽象絵画作品。同作家の作品は、このほかにも立体作品を展示しています。抽象画以外に、緻密なペン画やアクリル画、刺繍、粘土など、あらゆる素材・技法を積極的に用いた制作を行っています。
ほかの利用者さんたちと切磋琢磨して絵を描くなかで、まわりからの影響を受けて「自分も大きな作品を描きたい」と思い、手がけられた作品。79×109cmの大型作品でありながら、随所に施された細やかな描写に、目を見張ります。
本作品は、架空の店にオリジナルのキャラクターを創作し、看板風に仕上げたものです。このほかにも、同作家による、愛らしいキャラクターを描いた作品が鑑賞できます。
※作品名はそれぞれ無題です。
訪れた人が「新たな価値を見出せる場所」を目指して
PALETTEでは、初の展示会に続き、新たな展示会を進める構想を練っているそうです。「PALETTEが今後目指すア―ト」について、嶋岡さんに教えてもらいました。
「『アート』と言うと、敷居の高さを感じる方も多いと思われますが、PALETTEのアートを、多くの方にもっと身近なものとして感じてほしいと思っています。一方で、一般的なアートとしての価値が高まるような作品が、この場所から生まれたらいいなとも考えています。
二つの方向性は矛盾しているし、どちらも実現させたいと思うのは欲張りかもしれませんが、現時点では『これがPALETTEのアートだ』という正解を出したくないと思っています。
何より、利用者さんの『これをやりたい』という気持ちを、まずはカタチにすることを大事にしたいと思います。失敗もあるのでしょうけれど、みんなで新たなことに挑戦し続けていきたいですね。
そしてギャラリーに足を運ばれた方が、『こんなデザインがあるのか』『こんな視点を持っているのか』と新たな価値を見出せる場所を目指していきたいと思います」
今後は、施設が所在する地域の枠に限らず、さまざまなイベントへの出展なども企画しているそうです。
PALETTEのアートを体感できる、限定イベントも実施しました!
会期中は、限定イベントも実施しました。9月中旬から2週にわたり「オリジナル缶バッチプレゼント」と9月下旬に「絵本朗読 生配信」を開催。
「オリジナル缶バッチプレゼント」は、展示会場内のオープンアトリエで作業する作家が、来場者が依頼するテーマを受けて、その場で絵を描き、缶バッチにしてプレゼントするというもの。作家との交流を介し、制作するさまが直に見られるので、作家の感性に触れられると好評だったそうです。
「絵本朗読 生配信」は、利用者さんが4F工房から、ギャラリーのモニターにオンラインでつないで、絵本の朗読を行いました。
PALETTEについて
2019年開設の障がい者支援施設です。
“個性をしごとに生かせる環境をつくる”という考えから、 単純作業に従事するのではなく、 各々の個性を生かせる「ものづくりの場」を提供します。
お菓子工房や本格的な窯を設置した陶芸工房、シルクスクリーン機器を導入した印刷工房に、 多様な表現が生まれるアトリエ。さらには、そこで生まれたものを発信するギャラリー、ショップなど、 さまざまな人の創作意欲を刺激しながら、 世の中に発信できる環境を整えました。
Instagram
https://www.instagram.com/palette_hmw/
■サービス種別
就労継続支援 B 型事業/定員:35名
生活介護事業/定員:20名
PALETTEでの活動の様子については、こちらの動画もご覧ください。