【障がい者入所支援施設だんけのそのポレポレクラブ】メンバーさんと共に楽しむ支援のかたちー淡路島合宿レポ―ト&インタビュー(前編)ー
平成医療福祉グループは、誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指し、グループのミッションとして「じぶんを生きる を みんなのものに」を掲げています。
今回、このグループミッションを自然に実践している、グループの障がい者入所支援施設「だんけのそのポレポレクラブ」(大阪府大阪市淀川区)の職員の想いや支援の考え方を、「島の合宿」の取り組みを通じてご紹介します。
本記事の取材は、2024年9月18日(水)〜19日(木)の1泊2日で実施された「島の合宿」に、グループ広報部員が同行。その様子をレポートします。
前編は、広報部員の視点から、ポレポレクラブ職員のインタビューを交えて、合宿の様子をメインにお伝えします。
※1 これ以降、「ポレポレクラブ」と略称表記します。
※2 ポレポレクラブでは利用者さんを「メンバーさん」と呼びます。
※ココロネ淡路
https://awaji.cocorone.space/
【2024年9月18‐19日合宿参加・取材対象者】
メンバーさん4名、職員4名
コロナ禍が落ち着き、満を持して「島の合宿」がスタート!
ポレポレクラブの職員は、かねてより施設で生活するメンバーさんが、施設外で季節を感じ、伸び伸びと自分らしく過ごす時間を多く持てるようにしよう、と考えています。
日常的に、職員はメンバーさんと近所へふらりと散歩に行ったり、メンバーさんの希望に沿って買い物や外食へ出かけたり、毎週末にドライブへ行くなど、屋外での活動を行っています。しかし、宿泊を伴う旅行となると、近年のコロナ禍の影響やメンバーさんの高齢化の進行などもあり、10年以上実施することが難しい状況にありました。
2024年に入るとコロナ禍がようやく落ち着き、折よくグループ内で淡路島の「島の合宿所」の運営も始まったため、このタイミングと立地を生かして、「島の合宿」をスタートすることになりました。
取材を行った9月の合宿は、開始から3回目の開催です。初秋とは思えない気温35度に迫る暑さのなか出発です!
施設から島の合宿所までは、車で約1時間半の道のりです。車中のメンバーさんの様子は、お気に入りのカセットレコーダーでずっと音楽を聴いている方がいれば、「海だー!」と景色に喜ぶ方もいたり、職員に寄りかかって気持ち良さそうに眠る方もいたりと、思い思いに過ごしていました。
淡路島に到着すると開放的な景色を前に、みなさんワクワクする様子が見受けられました。
さまざまな様子のメンバーさんに
じっくり寄り添う職員の姿
夕食までの時間、メンバーさんたちは自由に過ごします。暑さが厳しかったため、クーラーを効かせた宿泊棟でリラックスされていましたが、なかには機嫌が優れず、動けなくなる方も見られました。
今回の合宿に参加しているメンバーさんは、言葉(言語)でのコミュニケーションがある程度取れる方々です。(メンバーさんのなかには難しい方もいらっしゃいます)
メンバーさんと初めて会う筆者(グループ広報部員)にとって、みなさんとのコミュニケーションの入り口は、「会話」となりました。しかし、メンバーさんの気持ちが安定している時は、考えや気持ちをある程度くみ取ることができたものの、感情をコントロールできなくなったり、かたくなな態度などを示されると、その理由や対応がわからず戸惑うことが多々ありました。その都度、職員に「どうすればいいのか」を教えてもらい、職員の関わり方を見ていました。
職員は、日頃からメンバーさんと深く関わっているため、不安定な行動の理由もほとんど察しています。それでも、ご本人に丁寧に理由を尋ねたり、みんなと同じように行動しやすいよう促したりと、時間をかけてじっくり対応する様子が印象的でした。
合宿前、生活支援員の成川さんに取材した際、「障がいの有無にかかわらず、誰もが異なる個性を持っているため、何かを訴えたい時の行動も理由も、人によってさまざま」と話していました。
施設では、メンバーさんが不安定な行動などを取った際、まず原因を探るために職員間で連携して行動の前後を確認したり、別の対応を試みて行動の変化を観察したりと、数カ月間かけて原因を探ることがあるそうです。原因がわかれば、その人に合った支援方法を模索できるとのことでした。
この合宿でも、職員は試行錯誤しながらメンバーさんと向き合い、理解を深めようとする姿が、随所で見られました。
島の❝非日常感❞がメンバーさんをより活発にする
夕方、職員がメンバーさんの入浴をサポートし終えると、みんなが楽しみにしていた夕食の時間がやってきました。
出発前に施設長の森本さんから聞いていた「合宿ではみなさん、普段よりもよく食べる」という情報通り、みなさん実に食欲旺盛で、おいしそうに食べられます!
なぜ合宿所だと食が進むのか、その理由を森本さんは「目の前で調理されるバーベキューや焼きそばの香り、熱々の食事などが食欲を刺激するんじゃないでしょうか」と話します。
さらに、この島での「非日常的な体験」が、メンバーさんに大きな影響を与えているのではないか、という考えも教えてくれました。
少人数の合宿だからこそ、より一人ひとりのペースを尊重できる
食後に花火を開始。みんなで同じことを同時にやるわけではなく、メンバーさんそれぞれのペースで楽しみます。
最初から最後まで楽しむ方もいれば、ちょっとだけ楽しんだり、少し離れたところから眺めたり、ずっとテーブルにいたりと、四者四様。職員もメンバーさんのペースに合わせて一緒に楽しみました。
花火の後は、すぐに就寝するメンバーさんもいれば、なかなか眠れないメンバーさんもいました。筆者には楽しくて眠れない様子に見えましたが、職員によると「場所にこだわりが強い方なので、それが理由かもしれない」とのこと。
翌日は、「パンケーキ店の開店時間に間に合うよう出発すればいい」という、ゆるやかなスケジュール設定。そのため、職員はメンバーさんへ就寝を促しつつも、急がすことなく本人のペースに任せていました。
成川さんは「そのうち眠くなるでしょうし、明日は無理せず遅くに起きて、出発に間に合うようにすれば大丈夫」と話し、余裕を持った対応で見守っていました。
職員たちは、先に寝たメンバーさんの側で休む人と、夜遅くまで起きているメンバーさんに付き添う人に分かれて対応。夜中にトイレに起きるメンバーさんに合わせて職員も目を覚まし、寄り添っていました。
翌朝、メンバーさんたちはそれぞれのペースで起床し、早い方は5時頃、遅い方は9時頃まで眠っていました。のんびりと朝食を取り、それぞれ自由に過ごした後、11時前に淡路島内のパンケーキ店へ車で移動しました。
パンケーキ店に到着すると、まず、付近にある淡路島の観光スポット「岬のブランコ」へ。お一人ずつ、うれしそうにブランコをこぐ姿を見ていると、こちらが幸せを感じます。
ハイカロリーな朝食を経ても、パンケーキは別腹です。メニューを見ながら食べたいものを選択するメンバーさんたちの姿は生き生きとしていました。
帰り道では渋滞に巻き込まれましたが、車内にはたくさん遊んだ夏休みの後のような、ゆるやかな雰囲気が漂っていました。無事に施設に戻ると、メンバーさんは元気に施設内へ戻っていきました。
合宿が引き出す、メンバーさんたちの新たな一面
合宿中、メンバーさんたちには時折予期せぬ反応や感情の不安定さが見られる場面もありましたが、全体としてはみなさん穏やかに過ごし、楽しむ姿が印象的でした。
そのことを森本さんに伝えると、「実は今回のメンバーさんたちは自己主張が強めで、普段は施設内で衝突が起きることも多々あるんです」と話されて、筆者は驚きました。合宿中にはそうしたトラブルが一切ないどころか、むしろメンバーさん同士、互いを気遣い合う様子をよく見ていたからです。
森本さんは「ここへ来ると、みなさん協調性が引き出されるみたいです」と話します。
さらに、合宿に参加したどの職員も、「メンバーさんのほとんどが、施設では見せない一面が、ここで見られた」と伝えているとのこと。
例えば、普段は食べられない野菜を食べたり、施設では夜中に起きてしまう人がここでは朝までぐっすり眠ることができたり、またほとんどが「今までにない、いい表情」を見せられるそうです。
なぜ合宿ではメンバーさんの良い一面が引き出されるのか、その理由について森本さんは次のように答えました。
森本:「おそらく、豊かな自然環境とゆとりのある過ごし方が、メンバーさんの心を満たすからではないでしょうか。
開放的な場所でリラックスし、多少大きな声を出しても、ここなら地域の方の理解もありますし、立地的に問題ありません。それに、施設では集団生活のため、生活リズムを周囲と合わせながら体調を保つよう気をつけていますが、ここでは時間的な制約があまりありません。いつもよりたくさん寝たり、普段とは違う食事を楽しめたりと、日常の制限から解放されるから、イライラしたり不安になる感情も減って、気持ちも穏やかになるんだと思います。
ここではメンバーさんが伸び伸びと過ごせることがわかりました。この環境で、さらに長期間過ごしたら、どんな変化があるのかなと、ふと考えるようにもなりましたね」
この記事は後編へ続きます。
後編では、職員インタビューを通して、ポレポレクラブの支援の考え方について掘り下げます。ぜひご覧ください!