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【人事部スタッフインタビュー】グループ職員が「自分らしく生きる」ための職場環境づくり(後編)

平成医療福祉グループは「じぶんを生きる を みんなのものに」(※)をグループミッションとし、誰もがどんな時も、自分らしく生きられる社会の実現を目指しています。

グループが医療・福祉を提供する目的は、患者さん・利用者さんがより良く、自分らしく生きるためのQOLの追求ですが、グループ職員自身が「自分を生きる」を実現することも大事に考えています。
そのための職場環境づくりにおいて、グループではどのような取り組みを行っているのか、人事スタッフに聞きました。

後編では職員のコミュニケーションを活性化するための「つなぎて」の取り組みや、それらの業務に携わる人事スタッフの想いなどをお伝えします。

※参照

前編はコチラ!


次の3名をインタビュー!


泉 小百合(いずみ・さゆり)/人事部課長
■趣味:お花 ■好きな食べ物:(今は)豆腐 ■好きな言葉:中庸


大沼 恭平(おおぬま・きょうへい)/人事部係長
■趣味:野球観戦 ■好きな食べ物:舞茸の天ぷら ■好きな言葉:不垢不浄


相馬 深雪(そうま・みゆき)
■趣味:ゲーム ■好きな飲み物:ビール  ■好きな動物:猫(2匹と一緒に暮らしています)


新入職員と職場の橋渡し役となる「つなぎて」とは?

職員同士のつながりを育むための、職場環境づくりのアクションの一つとして、人事部では新入職員と職場の橋渡し役を担う「つなぎて」プロジェクトを2023年よりスタートさせました。くわしい内容について、前編に続き、人事部の3名に話を聞きました。

【つなぎてプロジェクト概要】
「つなぎて」は、入職する新人と職場をつなぐ役割を担う職員の愛称

目的:「つなぎて」が新人との関わりを通じて、みんなが協力し合える職場環境を作り、誰もが居心地よく働ける職場のカルチャーを生み出す。

開始時期:2023年

実施場所:2023年はグループ関東7病院、2024年はグループ関東5病院、関西5病院で実施。

募集人数:1病院あたり「つなぎて」を次の人員で募集。2023年:2名以上 、2024年:2名。

つなぎての役割内容
・新人研修期間中、新人が職場になじみやすくなるようなプログラムを企画・実施。(病院スタッフで協力して作り上げるための中心的役割となる)
・新人研修期間を終えても、新人がいつでも気軽に話しかけて相談できるなど、心のよりどころとなる存在を目指す。


グループで作成した、「つなぎて」募集時のチラシ(2024年)。



ー「つなぎて」をスタートさせた経緯を、この企画の担当者である大沼さん、教えてください。

大沼:「つなぎて」の企画を考えるまで、いろんなきっかけがありましたが、そのなかでも大きかったのが、グループ代表との「職員同士が、もっと助け合える関係性を築けるといいよね」という会話でした。
少し大きな話になりますが、なんとなく今、社会全体に「困っている人に、気軽に声をかけにくい」風潮がある気がします。例えば職場の仲間で困っている人を助けたいけれど、「自分の業務外のことなのに協力していいのか? 」とか「周囲から良く思われないんじゃないか?」などが気になり、行動できないようなケースです。困っている人がいたら助けるのは、本来、人として当然のことなのに、なぜか抑圧したりされたりするのは、おかしなことだと思います。
それからコロナ禍の影響もあって、単純にコミュニケーションが希薄になりがちな時期でもありました。
そこで、困っている人に、当たり前に声をかけられるような関係性・文化を作るきっかけを作れないか?  という考えから、この「つなぎて」というプロジェクトが生まれました。

ー助ける対象を「新人」としたのはなぜですか。

大沼:このプロジェクトをどういう形にしようかと代表と話し合い、「困っていることが多い」対象としてわかりやすいのは「新人」だと考えました。
病院内部のことを何も知らない新人と、その新人が職場に入った時に不安なことや困ったことを一緒に考えてくれる「つなぎて」職員の関わりが育まれれば、それは病院全体にも良い影響を与えるのではないか、と考えたんです。
もちろん、これまでも毎年、グループ病院の現場ではしっかり新人を支えていて、困った時には病院総務の方などが窓口になるといった体制は築かれています。しかし、新人研修を終えると、新人はすぐに各所属部署・病棟へ配属されるし、そこで迷った時に、業務以外のことでも気兼ねなく声をかけられて、頼れる人がいれば、新人にとって、職場が「居やすい環境」になるのかなと思いました。


開始2年目から「つなぎて」プロジェクトの広がりを実感


ーつなぎての役割に「新人が職場になじむためのプログラムを企画・実行」とあります。くわしくはどんな内容でしょうか。

大沼:まず、この企画で大事なのは「つなぎてが自ら自分たちで考えて実行する」ことです。その理由は病院ごとに特性や文化が異なるのに、人事部で「こういうことをして、新人が職場になじめるようにしてください」と決まり切った企画を考えてつなぎてに渡すのでは、意味をなさないと考えていたからです。
つなぎてには新人研修中の4日間のなかで各日1時間、新人が職場になじみやすくなるために自ら企画したプログラムを実施してもらいます。この企画を練るために、事前につなぎてだけを集めて軽井沢にあるグループ合宿所で合宿を行い、新人研修期間中は業務と並行しながら、企画を実行してもらいました。

つなぎて合宿の様子(2023年)。

ーこれまでに前例のないプロジェクトですが、進め方に悩んだ部分はありましたか?

大沼:1年目はかなり悩みながら手探りで進めていました。プロジェクトの目的は揺るぎなかったんですけど、病院の職員にとって、この方法が適切なのか常に考えていました。
つなぎてが自身の通常業務以外の時間で、一から企画を考える大変さは容易に想像できましたし、現場の職員からも、つなぎてたちがプロジェクトと日頃の業務を並行しながら多忙に過ごしている姿を見て「これは大変そうだぞ」といった声も伝わってきました。
だから「こんなにつなぎてに負担をかけさせるほど、意義のあるプロジェクトになっているのだろうか」と思ったり、「だからといって、中途半端にアドバイスをして趣旨から外れてしまうと元も子もない」と考えたりしていました。
でも1年目を無事に終えて、2年目に取りかかり始めた頃、この企画をやる意義を自分自身もようやく実感し始めたように思います。

相馬:去年新人だった職員のなかから、「新人の時につなぎてに助けられて良かった」と感じたから、「今年は自分がつなぎてになる!」と、立候補した人がいたんですよね。

大沼:そうなんですよ。「つなぎてがいて良かった」という感想が聞けて、さらに立候補することで次につなげてくれた人がいるのはうれしいですね。それに加えて、去年のつなぎてたちの様子を見ていた現場職員のなかにも、プロジェクトに共感してくれる人が増えました。
そういう話を聞くようになってから「やっぱり、これはやってよかったんだ」と実感できました。


自らが考えて職場のカルチャーを作り出す意義


大沼:「つなぎてたちが自分で考えて企画する」内容に話を戻します。今年実施したなかから、ある一施設の例を挙げると、新人に役職者の名前と顔を覚えてもらうという企画がありました。
具体的には、まずつなぎて2名が十数人の新人を3チームに分けて、それぞれに役職者15名ほどのリストを渡します。そこに記されているのは名前と、その人の雰囲気などの特徴だけです。それらの情報をもとに新人が役職者を探しに行き「この人だろう」と検討をつけて声をかけ、正解したら本人からサインをもらいます。制限時間内で一番多くのサインをもらったチームが勝者という企画です。
これだけの話を聞くと楽しいゲームのように思いますが、この企画にはさまざまな背景がありました。ただ単に役職者との関わりを作るだけではなく、上司への声のかけ方や、患者さんと接している職員に声をかけてよいのか、また、どのように声をかけるべきなのかなど、業務に就いた時に不安が生じそうなポイントも含めた企画であり、事前につなぎてから注意点やお手本などもレクチャーされていました。
院内では役職者を含めた職員たちも、この企画をうまく進めていこうと協力
していました。みなさんで楽しんでやっていたようです。

新人研修期間中、つなぎてが考えたプログラムを新人と実行する様子。(画像は2023年のもの)

ーコミュニケ―ションのきっかけづくりや新人教育の要素が詰まった企画なんですね。

大沼:はい。後日、役職者と新人全員が集まる会を設けるところまで、つなぎてが自分たちで考えて実行しました。

相馬:どんな企画にするかを人事部で考えていたら、こういう案は出なかったですよね。

大沼:絶対出ないですよ。やはり現場を知ってるからこそ、何をどのようにやるのがベストかわかるんだと思います。

泉:何でもやっていいわけではなくて、現場での声のかけ方など事前にカバーしてあげているところがいいですよね。

相馬:もしかしたらつなぎて自身が新人の時、役職者にどう声をかければいいかわからなかったり、患者さんと接している時に話しかけるタイミングを間違えて怒られたりした経験があるのかもしれませんよね。

大沼:そうかもしれません。こういう企画がある一方で、別の病院では同じ時間に病院近隣の公園で桜の木の下で花見してワイワイ過ごそう、という企画もありました。
これも、ただの親睦会というわけではなく、つなぎてが新人に「病院の近隣地域に愛着を持ってもらいたい」という目的や、この公園が病院併設のデイサービスで利用している公園だから、事前にこの場所を「自分で見て知ってほしい」という意図がありました。
こんなふうに各病院のつなぎてによって、自分たちの病院の文化や特性に結びつくものをベースとして考えた、有意義な企画が実施されました。

ー泉さんも「つなぎて」に関わられていたそうですが、どう感じていましたか。

泉:1年目は、つなぎてを立候補のみ(※)で募集していましたが、初めての取り組みで、募集のための情報も少なかったので、正直なところ「この情報だけで立候補者は出るのかな」と思う部分もありました。けれど、ちゃんと名乗り出てくれる人がいることに驚きました。
つなぎての目的に「誰もが働きやすくなるための職場のカルチャー作り」がありますが、そこに目を向けてくれている職員の存在を知ることができたのは、とてもうれしかったです。
そしてやはり、つなぎてのみなさんは医療従事者で、「人を助けたい」という想いがもともと強いからこそ、こういう企画に共感するのかなと感じました。
こうした「良い職場環境にしていこう」という想いを持ち、行動を起こしてくれる職員がさらに活躍できる場や、組織の仕組みみたいなものをもっと作っていく必要があるな、とも感じました。

※2年目は他薦も可


職員が「じぶんを生きる」を実現するための
人事スタッフの課題と目標


ーではここからは、一人事スタッフとして感じる、職員の「じぶんを生きる」を守っていくための課題について教えてください。

相馬:福利厚生の観点から言うと、整っているようでそうではない部分がまだまだあるので、そこに手を入れ続けていくことが課題だと感じています。人事として、職員の「じぶんを生きる」が守られる福利厚生であれば、積極的に取り入れることを進めていきたいなと思っています。

大沼:私もそういう制度面ももちろん大事だと思うし、ハード面ももっと見直していく必要があるなと感じています。
これは人事としてどこまでやれるかわからない部分だけれども、病院のケースにおいて、職員がもっと居心地のいい環境を整備できたらいいなと思っています。「患者さんのために」という空間作りは職員みんなも注力していますが、職員のための空間作りは、そこで働く職員以外の第三者も気にかける必要があるなと、思っていました。
やはり職員のみなさんは病院にいる時間が長いので、居心地の良い空間で気持ちよく働いてもらいたいなと思います。

ーみなさんの話を聞いていると、人事スタッフは、もとより職員の「じぶんを生きる」を支えるのが使命なんですね。

大沼:そうですね。グループミッションが「じぶんを生きる を みんなのものに」に刷新される前は「絶対に見捨てない。」でしたが、このミッションにも、「職員のことも見捨てない」という意味が込められていると私は考えていました。
でも現場職員にとっては、このミッションを患者さん・利用者さんに対する想いとして強く捉えていたと思います。一方で私たち人事部の見捨てない対象は、その頃からずっと「職員」でした。
新しいグループミッションになって、人事部スタッフとしては、より職員へ、自分自身のことにももっと目を向けてほしいなと感じています。

相馬:この話に関連して、人事部のあるスタッフが、とある研修で言っていた言葉を思い出します。「ケアする人は、じゃあ誰がケアしてくれるの?」と述べてくれて、これは私自身もずっと思っていたことを表していた言葉でした。
医療従事者は、患者さんやそのご家族を第一に考えるあまり、自分が抱えている気持ちに気がつかない方や、気がつく方法を知らない方が多いように感じています。
自分自身を知らないと、相手に向き合う余裕も生まれないので、自分の素直な気持ちにふたをすることなく向き合ってほしいと思いますし、人事スタッフとして、それを現場職員に伝えていかなければいけないなと思っています。

泉:これについて人事のみんなで話し合っていたわけではなかったけれど、人事部として共通認識があったんだと、今気づきました。
医療・福祉の仕事は自分のことだけを考えていたら、とてもできない仕事だと思います。そういう職員のみなさんに自分自身を大切にすることに気づく重要性や、自分が満たされてることは、他者のためにもなり、患者さんへの良いケアにつながる、ということを伝えていくことが大事ですね。

東京事務所にて業務を行う3名の様子。


ー最後に、個人的な目標をそれぞれ教えてください。

大沼:これからも職員の人と人との関わり方に目を向けていきたいと思っています。人間関係において問題が起きる時って、相手が何をどう考えているのか、その発言の行動・背景がなんなのかをよく知らないうちに誤解していることが多いと感じています。不和が生じた人同士であっても、個人として見た場合にどちらもとてもいい人であることが多いんですよね。
人事の取り組みによって、お互いを知る機会が増えれば、その誤解も減らせると思っています。そんな取り組みに、これからもっと関わり、作っていけたらいいなと思います。

相馬:私は、これまで人事部スタッフとして現場の人を支えていこうと仕事をしてきました。この姿勢は基本的には変わらないんですけど、入職から時間が経つにつれて、現場職員を支えるためには「より、この世界のことを知らなければいけない」という思いが強くなりました。
そこで、昨年から社会福祉学科で勉強するために通信制大学に入りました。
ここでしっかり学んだうえで、あらためて今後、現場目線のサポートができるようになっていけたらと思っています。

泉:私は「グループ」という単位で、職員間のつながりを広げる機会を、もっと作っていきたいと思っています。
私は人事としてこれまで、施設や部門を横断したプロジェクトに関わることができたため、さまざまな施設の職員と出会い、会話するたびに「このグループには素敵な方が本当にたくさんいるな」と感じてきました。
ですが、職員の多くは所属する施設やチームのほかには、コミュニティーをもっていない方々がほとんどだと思います。
私自身、仕事をするうえで「出会った人の考えていることを知ることや、想いを共有すること」は貴重な学びの一つであると、身をもって感じています。だから同じように、こうした機会を望む方に、その「場」を提供していくことができたら、と考えています。
具体的には、所属や職種などを超えて、いろんな人が「気軽に話してつながれるような交流の場」として提供できたらいいな、という個人的な展望を持っています。
そしてなにより、人事部は現場のみなさんの存在があってこそのセクションなので、現場で抱えきれない問題などがあれば、より気軽に声をかけてもらえるようにしていきたいと思います。みなさんの「職場をより良くしたい」という想いに応えられるように、人事のみんなでがんばります!


東京事務所屋上にて。