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【トークセッション】グループ新人研修「スタッフの専門性を拡張しチームで成長し続けるために」(後編)

平成医療福祉グループでは、毎年、4月1日付けで入職した新人のみなさんに、グループ全体で行う新人研修を約1週間実施しています。

今年の研修内容はグループミッション「じぶんを生きる を みんなのものに」を実現するための5つのアクション(※1)を一つずつ紐解きながら、グループの医療福祉の考え方や、アクションに即した実際の取り組みの紹介、そして実践に際しての心構えなどを学ぶというプログラムをオンライン配信で実施しました。

そのなかから、アクション4「スタッフの専門性を拡張しチームで成長し続ける」(※2)について、グループ職員が講師となり、トークセッション形式で行った研修の様子の後編をお伝えします。

※1


※2

前編はコチラ!


トークセッション

2024年4月5日(金)実施
テーマ:アクション4「スタッフの専門性を拡張しチームで成長し続ける」

平成医療福祉グループでは、「チームの質」がそのまま病院の質に直結すると考え、チーム医療を重要視しています。チーム医療はなぜ大事なのか、良いチーム医療を実現するにはどうすればよいのか、グループ各部門で活躍する経験豊富な6名の職員が新人のみなさんに伝えました。

【トークセッションメンバー】

天辰 優太:医療事業部/経営企画医師
好きな食べ物はラーメン。コレステロール値を気にして、最近マラソンを開始。
小林 由美子:看護部介護部門長/介護福祉士
鹿児島県出身。趣味はモータースポーツ。
加藤 ひとみ:看護部本部長/看護師
好きな食べ物はパン。天辰さんと同様、コレステロール値を注視。
堤 亮介:栄養部本部長/管理栄養士
ランニングが好きで、横浜マラソンに出場歴あり。
池村 健:リハビリテーション部本部長/理学療法士
阿波踊りが大好き。地元徳島県では有名連に所属。
秋田 美樹:薬剤部本部長/薬剤師
豆乳ヨーグルトを毎日食し、気にしていたコレステロール値が改善!


なぜチーム医療がうまくいかないのか?

天辰:前半では「良いチーム医療」と「悪いチーム医療」の経験と、良いチーム医療に向けた環境作りの二つのテーマを、みなさんに話してもらいました。それでは三つ目、「なぜチーム医療がうまくいかないのか?」をテーマに話していきましょう。
まず私から話すと、「ゴールをどこに設定するのか」が、チーム医療がうまくいくかどうかを左右すると思っています。カメラに例えると、フォーカスをどこに当てるかで、仕上がりは変わりますよね。
私たちの場合、各自が専門職なので、どうしても自分の職種においての経験やエビデンスなどにフォーカスしがちです。もちろんそれは大事なことですが、もっと視野を広げて最終的なゴールを「患者さんにとって一番良いことをする」と設定し、そこにフォーカスすれば、自分の専門性にこだわらずに、ほかの職種と協力できるのではないかと思います。大きなビジョン(ゴール)を共有するのは、大事なことかなと考えていますが、加藤さんはどう思いますか?

加藤:患者さんに対応する時に「主語が患者さんになっているかどうか」、それが大事ではないかと思います。現場では主語が自分の職種になっているような対応が見られることもしばしばあります。そうではなく、患者さんは今後どうなるべきなのか、その目標設定をするべきだと思います。こうした情報共有ができるのがチーム医療の質の良いカンファレンスだとグループでは考えていますよね。

天辰:そうですね。カンファレンスはその中身が大事。それぞれの職種がADL(日常生活動作)はこうです、薬はこれを提供しています、とただ報告をして、それだけで終わってしまうのはもったいないです。

加藤:報告会的なカンファレンスでは「じゃあ、患者さんのその先はどうなるの?」という大事な部分が話し合われませんよね。
そこは自分たち専門職の意見として、「患者さんの目標がこうで、それに対して自分たちはこういうふうに介入しているけれど、ほかの職種から見るとどう考えられますか?」という問いかけなどが出てくることで、カンファレンスの質は上がっていくのかなと思います。


患者さんの「退院後の生活」まで考えて
意見し合えるチームに

天辰:やはり大きなゴールを見据えて考えるというのは大事ですよね。もっと言えば、私たちは患者さんの入院中の生活をサポートしていますが、退院後の生活まで目を向けて、どういうことができるかを考えることが大事だと思います。
池村さん、リハビリテーション部(以降、リハ)はそこを見据えていろんな取り組みを行っていますよね?

池村:患者さんの「自宅復帰」は多くのリハスタッフが掲げているテーマですね。これを自分たちの目標にして、カンファレンスでもチームの目標として提案することが多いです。少し話がずれますが、入院初期から「自宅復帰」を目標とするならば、新人スタッフに先輩の私たちは、「すぐにご自宅を見に行きなさい」と伝えています。その患者さんが、これまでどのような室内環境で生活してこられたのか、またご家族にも、患者さんが何を大事にしてこれまで生きてこられたのかを聞くなど、あらゆる情報を集めたうえで「自宅復帰」を目指すようにしないといけません。
患者さんにとって入院生活は一時期のものであり、大事なのはその後に続く生活です。だから安易に「自宅復帰」と言うのではなく、患者さんがどうすれば元の生活に戻れるのか、もしくは障害がある場合も、その状態でどうすれば暮らしやすくなるのか、ということを入院中からしっかり考える必要があります。新人のみなさんにも、このあたりは今から頭に入れていただきたいなと思います。

天辰:大事なポイントですね。介護部門の小林さんは患者さんの入院中の生活と関わりが深いと思いますが、退院後の生活についても考えて対応していますか。

小林:退院後の生活を見据える、というのは大事に考えているところです。私たちの業務での一例だと、退院に向けてご家族にオムツ交換の指導を行ったり、リハの人と一緒にトイレ介助の指導を行ったりしています。患者さんによっては、介助があればオムツの必要はないという方の場合でも、あえてオムツにして患者さんが自分で取り替える練習をすることもあります。というのは、退院後、自宅でご家族が不在になるケースもあるので、もしかしたら自分でオムツをしなければいけない状況が発生するかもしれません。だから、そこを見据えてのトレーニングです。
患者さんやご家族にとって、自宅復帰後の生活がどうなることが最善なのかは、私たちが決めることではないと思います。だから入院中に患者さんの今後の生活において何が必要かを考え、患者さんができることを一つでも増やすことが私たちの役割だと考えています。これを介護の職種に限らず、職員それぞれが心に留めておけば、各職種の視点からいい意見などが出てきやすくなるのかなと思っています。

天辰:そういう話をカンファレンスでもいいですし、朝礼が終わった後とか、少し時間が取れるタイミングで互いに話せるといいですよね。考えを共有し合う時間は大切だと思います。

秋田:今の話を聞いて、患者さんにとってのゴールは退院ではなく、その先、ご自宅に帰った後に「自分らしく生きる」ことであり、そのためにどうすればいいかを考えることが大事なんだなと思いました。
薬剤師って、どうしても患者さんの検査結果や状態から、ガイドラインに沿ってどの薬がいいか、それを考える部分にフォーカスしがちなんです。その薬は患者さんが飲み込みにくい薬ではないのか、ご自宅でちゃんと継続できる薬なのか、という考え方が二番目にきてしまっているのかなと思います。
これについては、リハや介護士、管理栄養士を頼りながら、飲みにくい薬なら変えようとか、転倒リスクがある薬だからやめようとか、そういうことをもっと話し合っていけるような薬剤部にしていきたいなと思いました。

天辰:やはり、それぞれの職種が思うことをちゃんと発言できる、「心理的安全性」(※)が大事ですよね。私たちのグループはこれを掲げて、研修もずっと行ってきました。ここで少し勘違いされがちなことは、チームが「仲良し」の関係になればよいと考えてしまうことです。もちろん、仲の良い雰囲気というのは大事ですが、これまでみなさんが話してきたチーム医療の内容において、その要素だけでは足りません。それぞれがプロフェッショナルな視点を持ち、今後どうしていきたいのか、何を目指すのかをしっかり持ち、その考えをべースにして、意見を互いに言い合えるような雰囲気を作る。そこを意識していくことが大事かなと思います。

※組織のなかで自分の考えや気持ちを安心して表現できる状態のこと


個々のスキルアップが「良いチーム医療」の実現につながる

天辰:では、最後のテーマです。良いチーム医療の実現には、個々のスキルアップも重要です。これをテーマに、どういうことなのかを話していきましょう。
堤さん、栄養部ではスキルアップのためにいろんな取り組みをされているようですね。

堤:新人のみなさんは、これまでたくさん勉強してようやく資格を取得し、今、知識がいっぱいな状態だと思いますが、私たちはここがスタートラインだと考えています。学んできたことをいかに現場で生かせるか、それがとても難しいんです。実習で経験したことなどはある程度イメージできているかもしれませんが、実際に患者さんを目の前にした時にそのままできるかというと……おそらく、みなさん1回くらいは失敗すると思います。私も失敗をしているので、同じような経験をするだろうなあと思うんです。
でも失敗の経験から学んで、スキルを少しずつ上げていかないと、これまで話していたような多職種との連携の時に力を発揮できません。まずは自分の専門分野を極めることが大事。栄養部では、グループ独自で管理栄養士のキャリアラダーというのを作っています。1年目は、現場で活躍できるようになるためのステップの年なので、レベルはゼロに設定しています。
レベルゼロではありますが、患者さんからは、みなさんは一人のプロフェッショナルとして見られるんですよ。そうなるとすごく緊張するとは思いますが、責任ある立場であることを自覚しながら、先輩職員に教わり、少しずつステップアップして自信をつけていってください。これがチーム医療の始まりになると思います。

天辰:そうですね。新人のみなさんの多くが、これから初めて現場に出ることになるでしょう。学んできたことをうまくやることも大事ですが、そこに捉われすぎるのはあまりよくないかなと思います。医療なので、絶対にやってはいけない失敗というのもありますが、誰もが失敗から学び、そこから成長して次のレベルに進んでいけるんだと思います。
ほかのみなさんはどうでしょうか?

加藤:看護部でも、クリニカルラダーを取り入れています。看護師は命に直結する部分に関わる仕事なので、1年間綿密なプログラムを組んで教育を行っています。夜勤は、グループでは2年目からの職員しか入りません。病棟によっては、夜勤は1人か2人体制で行うので、急変対応までをしっかりできる看護師に育つまでは、夜勤デビューできないようにしています。
また、先ほどの話にもあったように、患者さんから見れば新人もベテランも関係なく一看護師なので、不安なことはそのままにせず、必ず先輩に聞いて解決するようにしてください。それも看護師に聞くだけではなく、リハビリの視点を理学療法士に聞いたり、オムツ交換に関することは介護士に聞いたり、薬のことは薬剤師、食事のことは管理栄養士に聞くなど、いろんな職種の人がいるので、誰に聞けば自分の身になるんだろうという視点で質問してみるといいでしょう。特に、今年度から看護の枠に限らずに、チームで支えるという「チーム型支援」に教育体制を変えるので、うまく活用してほしいなと思います。

池村:同じようにリハにも部門としての教育システムがあるので、新人のみなさんは安心してください。部門の教育方針では「社会人」「医療人」「専門家」という三つの立場からの視点を持って患者さんに接することを掲げています。「社会人」としては、慢性期医療において、患者さんのほとんどが新人のみなさんより年上で、人生の大先輩の方たちですので、まず患者さんに敬意を払うことを忘れずに接することが大事です。「医療人」としては、みなさんこの医療業界に飛び込んだ時点で、大きな使命を背負っています。対するは人の命なので、その責任感をしっかりと身につけてください。「専門家」としては、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)というのは、新しい技術や概念などに興味を持つ方が多いのかなと私は思っていて、勉強熱心な方が多いです。それはとても良いことなんですが、自分の考え方に固執してしまいがちな人もいるんですね。専門家であると自負するのなら、ほかの職種の高い専門性も理解できなければいけません。それを知って初めて、自分の職種の強みはどこなのか、何を突き詰めていくべきなのかがわかると思います。
ではどこで他職種の理解を深めていくかというと、やはり病棟やカンファレンス、そして日常で接するなかで、コミュニケーションを取りながらたくさん見たり聞いたりしていくといいでしょう。これが個人のレベルを上げていくことにつながると思います。どの職種もこういうことができるならば、それこそすごくいいチームになるし、目指すべきところではないかと思います。

小林:介護職は、患者さんへの直接的なケアを行う病院の職種のなかでは、唯一医療従事者ではないんですね。ですが、介護部門のなかには介護福祉士や実務者研修を修了した職員、初任者研修を修了した職員、無資格の職員など、さまざまな職員がおり、それぞれの成長段階に応じて受けるラダーシステムを、みなさんに用意しています。そこで「資格」というのはあくまでも知識としての評価なので、ラダーをステップアップさせる要件には、かならず「実働」、つまり実際に何ができるか、そこを評価するように整えています。現場で経験して、それを自分で振り返り、理解できている部分とできていない部分を踏まえて、自己学習力を磨いてもらえたらと考えています。これができれば、介護職も自分たちの職種の強みを打ち出して、良いチーム医療へ貢献できると思っています。みんなで研鑽を重ねながら、ほかの職種の専門性の理解も進めていけたらいいなと思います。


職種の枠を超えて学び、みんなで連携してチーム医療を築く

秋田:これまでの話を聞いて、新人のみなさんは、今までたくさん勉強をしてきて、この先も勉強を続けることだと思いますが、それをいかにほかの職種に伝え、アウトプットできるか、というところがこれから大事になると思いました。
先ほど話に出たカンファレンスや普段の何気ない会話のなかでも、「私はこう思いますが、あなたはどう思いますか」と伝えながら話す力が実は一番必要になるんじゃないかなと感じています。そして、考えを伝える時は、みなさんそれぞれに、自分の考えが職種の知識・経験から正しいと思って発言しがちですが、一度立ち止まって「この考えは、ほかの職種から見たら正しいのかな?」と、考えてみることが必要な時もあると思います。
最終的に「患者さんにとってのベストはなんだろう?」ということについて、みんなの視点を持ち寄り、意見を出し合って、その最善を探していけたら一番いいのかなと思いますし、やはりそのためには、普段から互いに話をしなければいけないなと感じました。

天辰:みなさん、ありがとうございます。ちょうど話がいい感じにまとまりましたね!

一同:(笑)

天辰:みなさんの話の内容は共通していました。やはりそれぞれのスキルアップには、自分の職種はもちろん、職種の境界を超えた学びが必要であり、それができてこそ、良いチーム医療の実現に貢献できるということですね。
とはいえ、新人の時は、人に聞きにくいこともたくさんあるかと思います。それから、黙っていたほうがラク、という言い方は変ですが、そうなってしまう人も残念ながらいるんですね。黙っていれば怒られることはないかもしれませんが、その代わり良いことも何も起こりません。新人のみなさんには、そういう姿勢は取ってほしくないですね。せっかくみなさん、若くして志を持って入職したので、先ほどの池村さんの話にもありましたが、気づいた時に「こんなもんかな」で終わらせずに、病棟で発言してください。それが大事なことだと思います。
それから、グループでは今後も職種の垣根を超えた研修や勉強会などの機会も、より増やしていく予定なので、しっかり活用してチャレンジしていってください。さまざまな職種の人と関わり合い、高め合いながら、良いチ―ム医療をこれから一緒に作っていきましょう!


研修を終えて、オンライン越しに新入職のみなさんに手を振る、トークセッションメンバーたち。みなさん台本無しに、自身の考えを率直に話してもらいました。

みんなにも読んでほしいですか?

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