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HMW大学セミナーレポート♯5「個性の色が交ざり合い新たな可能性が生まれる場所『PALETTE』の魅力」

平成医療福祉グループは主に職員の視野の拡大を目的とし、オンラインセミナー「HMW大学」を開催しています。今回は2024年9月13日(土)に開催された、第5回目のセミナーレポートをお届けします!

「HMW大学」とは?
平成医療福祉グループでは、医療福祉の優れた専門職になるためには、専門領域にとどまらず社会全体を見据え、見識を広げることが重要だと考えています。
そのため、医療福祉分野以外にもさまざまな分野で活躍する専門家をグループ内外から招き、今後の業務における意識改革につなげるための学びの場としてオンラインセミナー「HMW大学」を始めました。
このオンラインセミナーは、グループ職員のみならず、誰でも無料で参加できます。

今回のセミナーでは、平成医療福祉グループが運営する障がい者支援施設「PALETTE」(大阪府大阪市淀川区)について、施設長の嶋岡 真人さんが、2019年の施設開設から現在までのPALETTE利用者さんと職員の歩みを、さまざまな活動やプロダクトを通してご紹介。同時に、誰もが活躍できる社会の実現を目指し、やりがいと楽しみのある日々を過ごして行くためには何が必要かについて、PALETTEの考えを伝えました。


セミナーレポート第5回

2024年9月13日(金)開催
話し手:嶋岡 真人さん(社会福祉法人 関西中央福祉会 PALETTE / FAN 施設長)
モデレーター:前川 沙緒里さん(平成医療福祉グループ 介護福祉事業部 部長)

PALETTEについて

PALETTEの建物の前にて、利用者さんと職員の集合写真。

「個性をしごとに生かす」という考えから、ものづくりに特化した活動を行う福祉サービス事業所です。「就労継続支援B型」と「生活介護」の二つの事業を行っています。
PALETTEは、まさに”パレット”のような存在となって、障がいの有無を問わずさまざまな人が交ざり合い、新しい関係や価値を育むことを目指しています。そして”ものづくり”を介し、誰もが自分らしさを高め、発揮できる場所でありたいという想いを体現する場を開いています。


個性の色が交ざり合い新たな可能性が生まれる場所『PALETTE』の魅力

セミナーは、PALETTEの1階ギャラリー/ショップスペースから配信されました。オンラインで約370名が参加し、会場にも数多くの方がお越しくださいました。

セミナー会場となった1階は、各工房の利用者さんたちが作った商品が常時販売されており、利用者さんたちの作品の展示会が定期的に開かれている空間です。
話し手を務めた施設長の嶋岡さん。
モデレーターを務めた前川さん。


嶋岡さんは、冒頭でPALETTEの紹介を述べた後、自身の経歴を伝えました。嶋岡さんはPALETTEに所属する前はアパレル業界や飲食業界といった異業種で、ものづくりに精通する仕事に就いていました。
アパレル業界では精神障がいや発達障がいのある人たちの目覚ましい活躍にふれる機会があり、その頃から障がいがある人たちの豊かな発想や個性あふれる表現に心を動かされていたと話しました。
いつしか、自身の経歴を生かして、障がいがある人が「ものづくり」を通じて、より生き生きと過ごすためのサポートがしたいと思うようになり、PALETTEに就職したという嶋岡さん。今ではこの仕事が「自分の天職だと思う」と述べました。

続いて、PALETTEの「ものづくり」について詳しく紹介しました。PAETTEには、2階にお菓子工房、4階に印刷工房、3階に陶芸工房を備え、各階で利用者さんたちが職員から指導を受けたり、一緒に考えたりしながら、ものづくりを行っています。
PALETTEが大事にしているのは、利用者さん一人ひとりの個性や好み、ペースに合わせて制作を行うことです。「何をしていいかわからない」という利用者さんの場合でも、職員は、その方が興味を持つものを探り、楽しみながら取り組める仕事が見つけられるようにサポートしています。

菓子工房では、アイシングクッキー、キャンディ、パウンドケーキなどを製造しています。一般就労を目指す訓練の場として活用されている方が多く、それぞれに役割分担しながらコミュニケ―ションを取り合っているそうです。人気商品はアイシングクッキー。季節に合わせたデザインや自由な発想のデザインが特長です。近隣企業からの受注生産も増えています。
印刷工房では、利用者さんが描いた絵をTシャツやバッグなどに印刷した商品を作っています。一人ひとりの個性光るデザインが特長で、オリジナルキャラクターもたくさん制作され、人気を集めています。併設されたアトリエでは自由な創作活動が行われ、粘土でアニメーションを作るなど、新しい取り組みも生まれています。
陶芸工房では、「生活介護」の利用者さんが活動しています。重度な障がいがある方も安心して過ごせるように、一人ひとりに合わせた支援を行っています。植木鉢や食器、オブジェなどの作品を制作し、さまざまな店舗やギャラリーで販売・展示されています。


一人ひとりの個性を生かした「ものづくり」を通じて
社会とつながるための支援を行う

嶋岡さんは、各工房の特長と同時に、今回のテーマでもある「PALETTEの魅力」を3点に集約して伝えました。

魅力① PALETTE施設内で簡潔するプロダクト
PALETTEでは、利用者さんが自分でデザインしたものが商品化され、社会で販売されるまでのすべての工程に関われるようにしています。こうすることで、利用者さんは商品を購入してもらい、社会から評価を受けると同時に達成感も得られ、自信がつきます。
そしてこの成功体験は、次の商品制作や社会参加への意欲アップへとつながります。この循環を施設内で成立させているのがPALETTEの支援の特徴です。

魅力② 個性豊かな職員がたくさんいること
各工房にはそれぞれの分野のスペシャリストでもある職員がたくさんいます。利用者さんにとって、どのようなものづくりが本当に良いのか一人ひとりと向き合い、職員は自分の経験や専門性を生かしながらアイデアを出し合って考え、支援を行っています。

スライドで、元パティシエの菓子工房主任、陶芸のスペシャリストである陶芸工房の担当者、福祉業界歴20年の陶芸工房主任、元グラフィックデザイナーの広報・事務担当の職員が紹介されました。担当者の似顔絵は利用者さんたちが描いたものです。

魅力③ 利用者さんと社会とのつながりを広げる
PALETTEでは利用者さんが好きなもの・興味があることにスポットを当てた支援を行っていますが、嶋岡さんは「利用者さんが作った作品を商品として世の中へ送り出して販売させ、社会とのつながりを作ることが施設としての本当の責任である」と伝えました。
コロナ禍が落ち着き始めてから、積極的にイベント出店を行うようになると、PALETTEの作品はたくさんの方に注目されるようになり、今では多くの店(※)で取り扱われるようになりました。2023年には阪急百貨店:阪急うめだ本店「うめだス―ク」でポップアップストアを出店したほか、現在、イオンモール株式会社が展開するバーチャルストアにも出店しています。嶋岡さんは「障がいがある人が作った商品と知らず、ただ『商品そのものの良さ』に引かれて商品を購入される人が多くいることをうれしく思う」と、利用者さんたちの「ものづくりの力」で社会とのつながりが育まれていくことの重要性を述べました。

SOLSO FARM(THISIS)NATUREグッドジョブストア など多数


ポップアップストア出店の様子。利用者さんによるライブペインティングも実施されました。


このほかにも、PALETTEの活動を広く伝えるために、広報誌「from PALETTE」を発行しています。また、賛助会員制度「PALETTE CLUB」を設立し、活動資金を募って利用者さんの制作活動を支援する仕組みも作っていることを紹介しました。(※)

※賛助会員制度「PALETTE CLUB」についてはこちらの記事よりご確認ください!



利用者さんも職員も「挑戦」し続けるPALETTEの姿勢

最後にオンラインと会場から寄せられた質疑応答を経て、PALETTEの今後の展望について嶋岡さんが以下のように伝えました。

「利用者さんたちは、好きなことがあっても、『障がいがある』から諦めざるを得ないということが、場合によってはどうしてもあると思います。でも、私自身は利用者さんたちに諦めるということをしてほしくないな、と考えています。
これは職員にも言えることですが、挑戦しないまま『どうせ無理だから』と思うのではなく、『好きだからやってみたいな』という気持ちを大事にしてほしいと思います。
今、PALETTEの商品はいろいろなところで評価をいただけるようになりましたが、一人ひとりの可能性をもっと広げるために、同じような制作を継続するだけではなく、利用者さんも職員も『やりたい』と思う新しいことにどんどん挑戦していけるようにしたいと考えています。
そうして、利用者さんがものづくりを介して社会に対する自信を持ち、少しでも自分自身に誇りを持って過ごしていただける施設にしていきたいと思います」

会場参加者とオンラインからの質問に嶋岡さんが応える様子。


HMW大学は次回、グループが運営する大内病院(東京都足立区)の取り組みを「精神科病院建替プロジェクトとの歩みと 病院と地域が目指す新たなケアの形」をテーマとして開催します。

開催日は2024年10月25日(金)です。興味のある方はぜひ、ご参加ください!