神山町で訪問診療を行う「おうち診療所 神山」がオープニングイベントを実施しました!
平成医療福祉グループが運営する「おうち診療所 神山」(徳島県神山町)は、2024年11月2日(土)に、オープニングイベントを行いました!
おうち診療所 神山は2024年8月より診療をスタート。その間も、診療所の入る建物の改修を進め、改修がおおむね完了したこの時期に、満を持して地域のみなさまへ診療所のお披露目をかねたイベントを開催する運びとなりました。
訪問診療と小児外来を提供する「おうち診療所 神山」のご紹介とともに、オープニングイベントの様子をお届けします!
おうち診療所 神山が目指すのは
「最期までこの地で自分らしく生きることに伴走する診療所」です
徳島県神山町は、豊かな自然に恵まれた山間部に位置する町です。人口約5000人という過疎地域でありながら、近年では「地方創生の先進地」として注目されています。この地にIT企業やクリエイターなどが集まってサテライトオフィスの活用が進むほか、神山まるごと高専も設立され、移住者が増加しています。
地域活性化が進む神山町ですが、高齢化率は依然として高いうえに、病気などによって一定以上のサポートが必要な状況になれば、町外に出るほか選択肢がないという現状もあります。
これについて、2022年より神山町に移住し、「この町のために何かできることがあれば」という想いを抱いていた武久 敬洋平成医療福祉グループ代表は、「看取りのできる在宅医療を担おう」と考えました。
平成医療福祉グループは多くの人が自分らしく生きられる社会の実現を目指し、グループのミッションとして「じぶんを生きる を みんなのものに」を掲げています。
「いつまでも住み慣れた地域で自分らしく暮らしたい」という地域の方の想いに寄り添うことは、グループミッションの実践にも通じます。
こうして始まった「神山在宅医療プロジェクト」の下に、「病気ではなく、人を診たい」という共通の想いを持ち、多様な資格のバックグラウンドを持ったスタッフが集まり、おうち診療所 神山がスタートしました。
通院に困っている方や医療的なサポートが必要な方のお住まいに定期的に伺う「訪問診療」とお子さんの近くの相談先として「小児外来」も受けつけ、地域のみなさんの「自分らしさ」に寄り添い、最期まで伴走する診療所を目指しています!
おうち診療所 神山公式サイト
おうち診療所 神山note
~診療所の建物を紹介~
オープニングイベントレポート
11月2日のオープニングイベント当日は雨が強く降っていましたが、来場者数はなんと180名と、老若男女たくさんの方がお越しくださいました!
診療所1階では軽食コーナーを用意し、2階ではお子さんも楽しく医療に触れられる「からだ探検」コーナーを用意。そのほか、スタッフによるトークイベントも開催しました。
家族で参加された方も多く、お子さんたちは建物内を探検したり、読書スペースで本を読んだりと伸び伸び過ごしていました。来場者のなかには、「小児科が近くになくて困っていたので、ここに開設されると聞いて来てみました。ここは病院ぽくない雰囲気がいいですね」と話された、お子さん連れの方もいました。
診療所スタッフに診療所のことや訪問診療について相談する方もいたり、地域の方同士が楽しく語らい合ったりする姿も多く見られ、それぞれがこの空間で思い思いの時間を過ごしていました。
トークイベントの様子
トークイベント ①「おうち診療所ってどんなところ?ー当院が取り組む在宅医療についてー」
午前と午後にわけて、おうち診療所 武久院長(グループ代表)と廣橋 航医師が、在宅医療の重要性と診療所の目的を話すトークイベントを行いました。
トークは、武久院長から始まりました。
武久院長は最初に自己紹介をし、約2年半前に神山町に移住してから、「自分が住んでいる地域に生まれて初めて愛着が感じられる」と伝えました。そして、町の人達もこの地域を大好きな方が多いことを知り、ここでの暮らしを大切にしている一方で、地域に訪問診療の環境が整っておらず、最期の時を病院で迎えるケースが多いことに言及。
どのような方にとっても、自宅は「いつもの自分」でいられる場所ですが、病院にいるとどうしても「患者としての自分を演じる場」になりがちです。また、病院ではこれまで楽しんでいた生活習慣なども厳しく制限されやすくなります。
しかしこれが、「訪問診療」だともっと自由に、自分らしく最期までいられることをサポートできる」と話し、それが訪問診療の大きな魅力であることを伝え、神山町のみなさんに「自分らしく過ごすための訪問診療」を実践することが診療所の目的であると話しました。
武久院長は8月からすでに神山町で訪問診療を行っていますが、診療先のみなさんが「患者としての姿」を感じさせることなく、「普段のありのままの姿」で接してくださるため、「医師としても自然な状態を目の当たりにでき、とても心地よく感じている」と述べました。
最後に全6名のスタッフ紹介を行い、廣橋医師のトークへつなげました。
続いて廣橋医師は、「訪問診療」について、さらに具体的な説明を行いました。
廣橋医師は、「往診」と「訪問診療」の違いから説明し、往診は一時的な体調不良時に医師が自宅を訪れるもので、訪問診療は通院困難な方のご自宅へ計画的に訪れる継続診療であることを話しました。月に1〜2回定期的に自宅を訪れ、普段の生活のなかで診察を行います。
そして、多くの方が「訪問診療よりも病院の方が安全でできることが多い」と思いがちですが、実際には訪問診療でも病院と同じ治療・薬の使用が可能であり、緊急時には24時間対応も行っていると伝えました。
さらに、訪問診療では医師がじっくりと患者さんの話を聞き、その方のこれまでの仕事や好きなことなどを理解し、生活や価値観に寄り添ったケアが可能になると伝えました。治療が難しい病気でも、本人が望む生活を続けられるよう、医療・介護・福祉の支援を合わせて提供するのが訪問診療の役割であり、病気を治療するだけではなく、患者さんの「自分らしく生きる」ことに寄り添うことを大事にしている、と述べました。
また、これまで経験した神山町以外での訪問診療の実例を取り上げ、ある患者さんが廣橋医師のことを「人生最期に出会えた、大切な友達だと思っている」と伝えたことを話しました。それは「医師と患者という関係性を超えて、人同士の関係性が築けた結果かもしれない」という想いを伝え、神山町でも職種や立場といった垣根を超えて、「さまざまな人と、分け隔てなく会話をするような関係性を築いていきたい」と述べました。
最後に、神山町には豊かな「地域のつながり」があり、多くのサポートが受けられる環境もあるので、おうち診療所 神山のスタッフは、「この地域特有の❝人❞の温かさも大切にしながら、患者さんが希望する生活を送れるよう、これからも努力していきたい」とメッセージを伝えました。
トークイベント ②「写真で振り返る ~神山暮らしの1年間~」
二つ目のトークイベントは、安東 陸人(まちの助っ人)さんが行いました。安東さんは大学卒業後、グループに入職して神山町に移住し、約1年半を過ごしてきました。診療所開設までにも「まちの助っ人」という肩書のもとに、地域の方とつながりながら、地域の困りごとを調査し、診療所としてどうサポ―トすることができるかを考えてきました。
安東さんは、神山町での生活を通して、地域の祭りなどへの文化行事へ参加し、みなさんとの交流を深めたことをスライドを用いて説明。特に1年間を通して米作りに参加させてもらい、「できあがった米のおいしさが忘れられない」ことが大きな思い出になっていると話し、多くの人に助けられて神山町の暮らしを学ばせてもらったと感謝を伝えました。
これまで積極的に町のみなさんに声をかけ、イベントに参加してきた安東さんは、会場にいるほとんどの人とつながっており、顔見知りとなっていました。トークイベントの後半では、そうしたなじみ深い来場者たちに「神山の好きなところはどこですか?」と聞き、それぞれが「蛍の美しさ」「雨乞の滝」「地区ごとの祭り」「星空の美しさ」などと答えていました。
なかでも、「困った時に助け合える関係性」や「子育て環境の良さ」などの回答が多く挙げられ、神山特有の地域コミュニティのつながりの強さと温かさが、参加者のみなさんから伝えられました。
安東さんは、このトークイベントで共有した神山町に対するみなさんの想いを大事にして、今後も診療所と地域のみなさんをつなぎ、それぞれがこの地で自分らしく生きられるサポートのかたちを考えていきたいと話していました。
住み慣れた場所でずっと
自分らしく暮らせるように
おうち診療所 神山はまだ開設したばかり。今後も、地域のみなさんとの触れ合いを通じながら、一人ひとりの「自分らしく生きる」を支援してまいります。「こんなことで困っている」「こんな生活がしたい」などのご相談はもちろん、誰かと会ったり、おしゃべりをしたりする場として、ぜひ気軽に診療所へお立ち寄りください!