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「ここに藤香苑があってよかった」そう思われる施設を目指して(前編)

平成医療福祉グループでは、ミッション「じぶんを生きる を みんなのものに」を掲げています。ミッションを実現するための行動指針(アクション)の一つに「助けを必要とするすべての人に医療と福祉を届ける」(※)があります。

今回、このアクションに沿って、利用者さんがより良く生きるためのサービスの提供に努めるとともに、地域に根ざし、住民の方々のニーズに寄り添う姿勢を大事にする介護老人福祉施設「藤香苑」(東京都西多摩郡日の出町)の取り組みをご紹介します。
前・後編に分けてお伝えし、前編では施設内で作った管理栄養士監修による食事を、地域住民へお弁当として販売する「みんなのホッとランチ」についてご紹介します。施設長の石川 圭太さんと、取り組みを進めた管理栄養士の中村 彩さんの話を交えてお伝えします。

※ グループサイト参照


地域のみなさんに頼られる施設でありたい

介護老人福祉施設「藤香苑」は、都会の喧噪から離れ、豊かな自然に恵まれた西多摩郡日の出町に所在しています。穏やかな住環境が魅力的なエリアですが、近年では住民の高齢化が目立っています。

緑あふれる環境のなかにある藤香苑(写真中央)。

藤香苑の施設長 石川さんは、こうした土地だからこそ、地域のみなさんに「何かあっても、あの施設に行けば大丈夫」と認識される施設であることを目指しているそうです。石川さんに地域における介護施設の在り方について、その考えを教えてもらいました。

施設長の石川さん。

「このあたりは高齢者が多く、生活の利便性が高いエリアではないからこそ、地域の人々との『つながり』はとても大事です。藤香苑は、利用者さんの生活を支える施設であることはもちろんですが、地域の方々に頼ってもらえる存在となり、みなさんのコミュニティーのハブとなるような役目を担える場所でありたいと考えています。
そのために、地域住民の方が日頃から、藤香苑と接点を持っていただけるような取り組みを積極的に進めています」

石川さんのこうした想いのもとで、施設の職員が一丸となって、地域に開かれたさまざまな活動を実施しています。その一つとして、2022年7月より開始したのが、地域住民を対象としたお弁当販売「みんなのホッとランチ」です。


お弁当業務のモチベーションは「地域貢献」にある

「みんなのホッとランチ」とは、藤香苑で利用者さんへ提供している食事と同じものを、「お弁当」として地域住民へ販売するイベントです。

この企画は「配食サービスを始めてはどうか」という石川さんのアイデアから生まれたとのこと。高齢者が多いこの地域において、「管理栄養士が監修した栄養バランスの良い食事を届けることは、地域のニーズに合うのでは」と考えたことが始まりでした。

しかし、十分な周知が行き届かないまま配食サービスを始めるリスクを考え、まずは「お弁当」販売から始めて需要を探っていくのはどうか、と周りの職員に話していたそうです。

この考えに賛同したのが、同施設で働く管理栄養士の中村さんです。アイデアを形にする担当者として立候補し、実行委員会が結成されました。イベントの発案者となった中村さんに、実行に至る経緯を教えてもらいました。

管理栄養士の中村さん。

「施設長から『お弁当販売をやりたい』と聞いた時、企画の趣旨に共感したものの、調理の現場で今の業務と新業務を両立させる難しさも感じていました。これをどう進めるべきか、実行委員会のメンバーと話し合うことから始めたんです」

会議では、まず新業務の進め方の指針を決めたそうです。厨房の仕事で最優先するべきは、何より施設の利用者さんたちの食事提供を大事にすること。ここに悪影響が出ないように両立させる方法を、現場の声も吸い上げてみんなで模索しました。

会議を繰り返した結果、新たにお弁当用の食事を作らずに、施設内で提供している食事と同じものを提供することに決まりました。

イベント名も「みんなのホッとランチ」となり、価格は、ほぼ原価の300円に決定。「このお弁当販売では利益を求めない」と中村さんは話します。

「私たち職員がお弁当業務を進めるモチベーションは、『地域貢献』にあります。施設長をはじめ、職員はみんな『地域のためになることなら、やろう』という想いを常に持っているからこそ、この業務が成立しているのだと思います」

「みんなのホッとランチ」で販売されるお弁当。箱に掛けるラベルは職員がデザインしたもの。1食300円(税込み)。

ニーズを探りながら「みんなのホッとランチ」をスタート

こうして、まずは事前調査を兼ねた実験的な販売としてスタートした「みんなのホッとランチ」。

販売しながら地域住民のニーズを探るために、きちんとデータを取ることにしたそうです。「どのくらいの頻度で弁当購入を必要としているか」「どの曜日の販売がよいか」など複数の質問を記載したアンケートを作成し、プリントしたものをお弁当に同梱して直接渡す、またはWebのアンケートフォームを通じて回答してもらう二つの方法で調査を実施しました。

第1回目は、Webと電話で受け付けた事前申し込み段階から注文が殺到し、購入後のアンケ―ト回収率も高かったとのこと。さらに、アンケ―ト調査の結果から、「思っていた以上の需要があることがわかった」と石川さんは話します。

「予想以上に、幅広い世代の方がお弁当を必要としており、その大半が週1~2回の利用を望んでいることがわかりました。また、『配食サービスがあれば利用したい』という回答も98%に上りました。

こうした結果の要因としては、近隣に買い物施設がないことや、管理栄養士監修の食事に魅力が感じられた、という点にあるようです」

アンケートの結果をもとに、現在(※)は週2回、1日8食限定でお弁当販売を継続中。いずれもすぐに完売になるそうで、この先は、業務との兼ね合いを見ながら、さらに販売回数を増やす予定だということです。
※2022年12月時点。

職員がお弁当を渡す準備をする様子。
実際のお弁当表チラシ(2022年12月販売のもの)。


地域に本当に必要とされることを進めよう

石川さんは、地域へ販売する以上、地域のニーズに沿って変更を加えながら今後の販売を進めたいと話します。

「自分たちがやりたいことを提供するのではなく、本当に地域の方に必要とされるものを提供するべきだと考えています。そのために、みなさんの声を聴くことはとても大事。地域のみなさんの意見が、今後を決めると思っています」

さらに、「食」を介して、地域の方が気軽に介護相談ができるようにすることも、イベントの目的に含まれているそうです。

「介護施設を探している方でも、いきなり見学に訪れるのはハードルが高いのではないでしょうか。だからこそ、お弁当販売を介して気軽に足を運んでいただき、相談するきっかけが生まれればいいですね」

施設入口での弁当の受け渡し役は、主に事務員やケアマネジャー、相談員が担当しているとのこと。介護について相談がある地域の方が、声をかけやすいようにしているそうです。

施設入り口でお弁当を手渡す様子。リピーターの方も多く、職員としばしば会話が交わされています。

藤香苑の地域に向けた「食」の取り組みは、お弁当だけに限るものではありません。「今後は地域向けにスイーツ販売なども検討しています」と、中村さんは話します。

「施設内で作るプリンは、利用者さんからの人気がとても高く、自信を持って外に出せる一品です。地域の方の、ちょっとした楽しみになればいいな、と思っています。施設の入口に売店のようなブースを作って、販売することを計画中です」(中村さん)

販売計画中のプリン。こちらのパッケージも職員がデザインしたもの。

藤香苑では職員の「地域のために」という想いから生まれるアイデアが尽きません。前述のように、近隣に買い物施設がないからと、施設前に自動販売機も設置したそうです。

施設前に設置された自動販売機。地域の方によく利用されているそうです。

このほかにも、職員で協力し合って、さまざまな取り組みが進められています。

後編では、地域連携の重要性や防災の取り組み、施設長の地域への想いを交えた、今後の展望などをお伝えします。

本記事は後編へ続きます。

【地域とともに】「ここに藤香苑があってよかった」そう思われる施設を目指して(後編)


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