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「ここに藤香苑があってよかった」そう思われる施設を目指して(後編)

平成医療福祉グループでは、ミッション「じぶんを生きる を みんなのものに」を掲げています。ミッションを実現するための行動指針(アクション)の一つに「助けを必要とするすべての人に医療と福祉を届ける」(※)があります。

今回このアクションに沿って、利用者さんがより良く生きるためのサービスの提供に努めるとともに、地域に根ざし、住民の方々のニーズに寄り添う姿勢を大事にする介護老人福祉施設「藤香苑」(東京都西多摩郡日の出町)の取り組み「後編」をご紹介します。

後編では、地域連携の重要性や防災の取り組み、そして今後の取り組みの展望などについて、施設長 石川 圭太さんの話をもとにお伝えします。

※ グループサイト参照


前編はこちらからご覧ください。


災害で孤立も「つながり」でカバー。どんな時でも機能する「地域連携」が育めるように

前編で紹介した「みんなのホッとランチ」の地域への告知は、藤香苑のホームぺ―ジで知らせを出しただけではなく、日の出町社会福祉協議会(※以下、社協)にも協力をお願いし、周知を広げたそうです。

社協をはじめとする民間団体や近隣施設などとの連携は、地域での活動において欠かせないものだと石川さんは話します。

※以下、「」内の発言はすべて石川さん

施設長の石川さん。

「藤香苑では、日頃から周りとのネットワークを築き、つながりを強めることを大事にしています。そのためにも社協主催の月1回の清掃や、日の出町について考えるオンラインサロンなどの地域イベントにも、職員が精力的に参加しています。また、職員の一人は社協の運営委員会に所属し、情報交換も密に行っていますね」

社協主催の地域清掃「つきボラ」に職員(左)が参加する様子。

このように、地域との交流を大切にしている藤香苑。この「つながり」があればこそ、どんな時でも「地域連携」が図れることを実感した出来事が、2019年の台風19号襲来時に起こりました。

台風が上陸した日、藤香苑が所在する日の出町は都道が崩落するという大きな被害を受けました。藤香苑は利用者さんの安全を第一に守ることに努めながらも、社協や近隣施設と相互に協力して、地域への支援も行ったそうです。当時のことを石川さんはこう話します。

「都道が崩落したことで、地域一帯が孤立状態に陥り、消防車や救急車が入れない状態になりました。
藤香苑では、24時間看護師が常駐している強みがあるので、これを生かすべく、日の出町と協議したうえで消防署と連携を図り、孤立した地域住民の救急搬送を一部請け負うことになりました。孤立期間中に、実際に救急要請のあった地域住民の救急搬送を担いました。
ほかの近隣施設とも、さまざまな面において相互に助け合うことができたので、日頃からのつながりの大切さを痛感しましたね」

地域への支援としては、このほかにも近隣の方へ施設の貯水槽の水を配ったとのことです。


地域が困った時、施設にできることは何か

被災した経験から、藤香苑では利用者さんはもちろんのこと、地域全体のためにできる防災対策を見直したそうです。

「あの台風以来、災害時の備えを強化してきました。藤香苑は、日の出町地域において災害時の二次避難所(要配慮者避難所)に指定されており、5世帯まで受け入れが可能です。地域の方に、ここを頼っていただく準備は常に整えています」

施設内には、非常用食糧などの十分な備蓄はもちろんのこと、水害による施設への浸水被害も想定して、各出入り口に設置する止水板も倉庫内に常備しているとのこと。

倉庫に用意している止水板。
出入口に止水板を設置する様子。

さらに、自家発電機も新たに備え、災害時でも施設を3日間稼働させる電力量が確保できるそうです。

屋上に設置されている自家発電機。

地域のみなさんに「何か困ったことがあっても、藤香苑に行けば大丈夫」と、思ってもらえるためには、今後も取り組みを進めるとともに、「こうした備えがあることを地域のみなさんに知っていただくことが大事」だと石川さんは話します。

「この先、施設で備えている発電機用ガスタンクを使った炊き出し訓練の実施を考えています。地域の方を招いて、お祭りのような形式で行えば、参加しながら『災害時には、ここのガスが供給されるんだな』と認識してもらえると思います」

施設のガスタンク。


「介護施設は高齢者だけのものではない」地域の老若男女とつながる施設へ

こうした地域との関係性は、高齢者に限らずさまざまな年代・立場の方に広げていきたいと、石川さんは考えています。

「まずは地域の方と利用者さんが、年齢や立場を問わずに交流できる場を、この施設から提供したいと考えています。
介護施設は高齢者だけに限られる場所ではありません。ここへの入所を目的に来られる方に限らず、どのような方でも訪れられる場所になればいいと思っています」

この考えの通り、藤香苑では地域の子どもたちと施設がつながりを持てるように、近隣保育園との交流会や「敬老の日」の動画イベントなどの実施を始めました。

近隣保育園との交流会にて。子どもが近くの畑で掘った大根を、利用者さんに渡す様子。
職員が撮影・編集した、近隣保育園の子どもたちが「敬老の日」のお祝いを述べる動画鑑賞の様子。利用者さんの多くが、子どもたちの姿を見て大変喜ばれるそうです。

今後は、藤香苑の広い屋上を、地域に開放して活用する計画も進んでいます。

屋上の普段の様子。きれいに整備されています。
屋上に面した休憩スペース。利用者さんやご家族、地域の方が屋上を散策する際のブランケットやレジャーシートなどが用意されています。

「コロナ禍明けに、屋上で実施する『プチマルシェ』の開催を計画しています。そのプレ開催として、今年の夏には施設の職員家族に限って、野菜や藤香苑で作ったプリンなどの販売を実施しました。多くの人が楽しんでいる様子が見られたので、地域のみなさんをお呼びしても、盛り上がるのではないかと思っています」

屋上での職員家族限定イベントの様子。

さらに、こうしたイベントの企画には「地域活性」の要素も含んでいきたいとのこと。

「実は以前から、この地域の活性化に役立てることはないかと考えていました。何かイベントを行うとしても、地域全体が盛り上がる企画にしたいと思っていたんです。
今検討しているのは、子どもたちが近隣のキャンプ場や魚釣り場などで遠足した後に、藤香苑の屋上でランチをするイベント。この施設と交流を持ってもらうとともに、地域の観光施設やスポットへ足を運ぶきっかけづくりになればいいなと思っています。
介護施設からの発信で、この一帯が元気になるような取り組みも進めていきたいですね」


利用者さんも地域の一員として、生き生きと過ごしていただくために

このように、藤香苑の考え方では施設全体が「地域の一部」であり、利用者さんも「地域の一員」です。石川さんは、利用者さん一人ひとりが地域に溶け込みながら、暮らしを謳歌してほしいと話します。

「施設に入所される方の心身にとって、入所以前の生活をできるだけ再現して暮らすことは、とても大事なことです。しかしそれだけではなく、さらに、ここに入所したことで新たなコミュニティーに触れて地域に愛着を持ったり、新しい体験をしたりと、今後の楽しみが増えるようになればいいなと思っています」

そのために、藤香苑では利用者さんが地域と関わりやすくなる工夫も取り入れているとのこと。前述の保育園との交流会やお弁当イベントにおいては、利用者さんが作った編み物の作品をプレゼントとして渡すこともあるそうです。

利用者さんが制作した、色とりどりのマフラーや帽子などの編み物作品。職員がプレゼント用に、丁寧にラッピングしています。

「利用者さんのなかには、『誰かに何かをしてあげたい』という気持ちを持つ方が多くいらっしゃいます。その想いを反映させる形で、地域と利用者さんをつなげる方法を増やしたいと思います。
コロナ禍が落ち着いたら、希望される利用者さんには、お弁当イベントでお客さんへお弁当を手渡す役割を担っていただくつもりです。社会参加にもなりますし、地域の方との会話が生まれて、知り合いも増えますよね。
入所前に知り合った方やご家族ばかりが面会に来るのではなく、この地域で新たに知り合った方が、利用者さんを訪ねるようになれば素敵だなと思います」


選ばれる介護施設、求められる介護施設であるために

地域とつながるさまざまな企画を実行し、発信にも力を入れる藤香苑。こうした取り組みにおける石川さんの真の目的は、「この地域一帯」の話にとどまりません。

「介護業界では今、少子化が進み、働き手不足の問題が進行しています。私たち介護施設は、入所される方はもちろんのこと、働き手からも選んでもらえる施設にならなければいけない状態にあります。
一般的に介護の世界は、『画期的』とか『革新的』といったイメージが持たれにくく、若い人が目を止めにくい状況にあるかもしれません。ですが、施設がアイデアを駆使した取り組みを企画・発信することで、イメージの殻を破り、介護の世界に興味を持つ人を増やすこともできると考えています」

「また、大きな話になりますが、日本の将来を考えた時、子どものうちから『高齢者福祉』に触れる環境を作ることは大事だと思います。藤香苑でも近隣保育園の子どもたちと利用者さんが交流する機会を設けていますが、そこには『幼いうちから介護施設に親しみをもってもらいたい』という想いも込めています。
いずれ介護職に興味を持つ子どもが増えればうれしいですが、そこまではいかずとも、高齢者と触れ合うなかで何かを感じ取ってもらえたらいいですね。そうした機会を、今後もここから生み出していきたいと思います」

「地域全体」に求められる介護施設を目指すと同時に、「これからの介護」においても、取り組みを通じて寄与したいと話す石川さん。

藤香苑は石川さんのこの想いのもとで、職員一人ひとりが自由な発想と行動力を発揮し、今後も新たな取り組みに挑戦していくそうです。


職員がデザインした、藤香苑のキャラクター「ふじまるくん」。 今後施設と地域、そして外部のすべてのみなさんをつなぐコミュニケーションツールとして、活躍の場を広げていく予定です。


藤香苑について

藤香苑は、特別養護老人ホームとショートステイの、二つの介護保険サービスを提供する従来型高齢者施設です。
施設では介護サービス提供のみにとどまることなく、「すべての利用者さんに優しい心と思いやりを」を目標として、充実した生活を過ごしていただけるよう支援いたします。施設見学会も行っておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

〒190-0181
東京都西多摩郡日の出町大字大久野3588番地1
042-597-7222