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ケアホーム葛飾「かつしかパンの日」にみる「託児室」の可能性(後編)


平成医療福祉グループでは、ミッション「じぶんを生きる を みんなのものに」を掲げています。ミッションを実現するための行動指針(アクション)の一つに「助けを必要とするすべての人に医療と福祉を届ける」(※)があります。

今回このアクションに沿って、施設はもちろん、地域の方々も生き生きと生活していくための拠点となることを目指す、介護老人福祉施設の取り組みをピックアップします。

当グループが運営する介護老人福祉施設「ケアホーム葛飾」は、職員専用の託児室を併設しています。

ケアホーム葛飾では「託児室も含めて一つのホーム」という考えを持ち、利用者さんや子どもたち、そしてその親を含めた職員全員が立場の垣根を越えてフラットにつながれる環境作りを進めています。

そのための取り組みの一環として、2022年6月より、当グループの障がい者支援施設「OUCHI」で作ったパンを、託児室の子どもたちを介して施設職員へ販売する「かつしかパンの日」という活動をスタートしました。

後編では、取り組みを進める職員の話をもとに、本企画を通して育んでいきたい「地域との結びつき」や、今後の展望、そしてグループ内での他施設とのつながりなどについてお伝えします。

※グループサイト参照

前編はこちらからご覧ください。


地域の子どもたちへ開いた「託児室」を目指して

「かつしかパンの日」は、複数回実施するうちに、子どもたちとの交流を介して施設内にいるみんなのつながりを広げるイベントとして定着してきました。(※)

この取り組みの目的には、実は大きなビジョンとして「地域との結びつきを広げていく」ことも含まれているのだそうです。

その詳細を作業療法士の秋原 健利さんが話してくれました。

※2022年度実施実績および予定/6月・8月・9月・10月・12月・2023年3月

秋原さん(右)

「子どもたちは託児室を卒業しても、親がここで働き、この地域で暮らしていく『地域の子どもたち』です。この関係性を、より豊かに持続させることで、地域コミュニティーの一部が育まれていくと思います。
職員や利用者さんが、卒業後も地域の子どもたちの成長を見守れて、子どもたちにとっては、幼いころから自分のことを温かく迎え入れ、いつでも立ち寄れる場になれたらいいな、と思っていたんです」

秋原さんのこのような希望は、「かつしかパンの日」に小学生が参加したことがきっかけで、さらに膨らんだようです。

「『かつしかパンの日』で子ども店長を務めるのは、主に託児室に通っている未就学の子どもたちですが、これまで実施したなかで、2人の小学生が参加してくれました。1人は託児室を卒業した小学生の女の子で、もう1人は託児室の卒業生ではないものの、妹が現在通っているという小学生の男の子です」

小学生の女の子(右)。託児室の子どもたちの面倒をみる様子。
花紙作成を手伝う小学生の男の子(右)。

「小学生の女の子が、ランドセルを背負って施設を訪れると、顔見知りの職員たちが、成長した姿を見られてとても喜んでいました。男の子のほうは、自分の妹を含め、託児室の子どもたちの面倒をみながら自然と活動に溶け込み、2人とも利用者さんや職員と交流する楽しいひとときを過ごせたようです」

このように、就学した子どもたちにも、既存の託児室の延長のような役割で、家でも学校でもない居場所を提供することは、今後の大きな目標だと秋原さんは話します。

「この施設には開設当初から地域の人たちとの交流を図る『地域交流スペース』が設けられています。コロナ禍の影響で、ここを生かせていなかったのですが、ゆくゆくは、この場所をケアホーム葛飾に関係する子に限らず、地域の子どもたちへ開放したいという展望を持っています。
こうした場があれば、働く親御さんも安心できるでしょうし、幼いころから介護施設の存在に親しみを持ってもらえたらうれしいですね。そういう『託児』もできるようになればいいなと思います」

小学生も参加した「かつしかパンの日」は、目標へ向かう小さな一歩として踏み出したのだということです。

託児室に子どもを預けている、看護師佐藤さんとお子さんとの交流の様子。


グループの連携力を生かして、施設内外の人たちとつながれるように

最後に、施設長の新村 俊樹さんに、施設長としての立場から「かつしかパンの日」を実施して得た気づきや、職場環境に与える影響について教えてもらいました。

新村さん(右)

「今回、介護福祉事業部 サービス企画課を介し、OUCHIと連携して一つの取り組みを実施できたことで、『グループ組織内での部門を越えた連携』を実感しました。
医療・福祉の施設は、さまざまな専門職の人が働いているため、職員同士の連携や協働がなければ成り立ちません。今回はさらに、それぞれの施設の枠を越えて連携できたわけですから、グループという組織の良いつながりが生かされているなと、思います。
こうした取り組みを行うことで、普段は関わり合うことがほとんどないOUCHIの職員やスタッフ(※)とも接点を持つことができました。グループ内の施設同士だからこそ、お互いの顔と想いが見えたうえで交流できたことも、良かったなと思いますね」

※ 障がいを持つ方の就労を支援するサービス(就労継続支援B型事業所)を利用する方を、本記事では「スタッフ」と称します。

パンを届けに来たOUCHIスタッフの様子。子どもたちの笑顔から、癒やしや元気をもらったというスタッフもいるそうです。
OUCHIの工房内で商品を製造する様子。スタッフの手で、一つひとつ手作りで丁寧に作り上げられています。

さらに、「子ども」という存在が人と人を結びつける作用を持つことを目の当たりにし、改めて職場に与える影響の大きさを実感したと、新村さんは話します。

「今回の取り組みで、普段は託児室に足を運ぶ機会がない職員も、パンの購入を通じて立ち寄ってくれました。短い時間でも、託児室の職員や子どもと交流できたことは、大きな意味を持つと思いました。
施設内でのつながりが広がり、深まることは、気持ちよく働くための職場環境作りに通じ、最終的には利用者さんたちへサービスとして還元されると思うので、とても大事なことですね。
今回の企画のように、この施設では職員から『これをやってみたい』という声が、うれしいことによく挙がりますし、サービス企画課から新しいアイデアなどももらえるので、施設全体にプラスになる提案は、今後もみんなで進めていきたいと思います」

ケアホーム葛飾は、グループの他施設・多職種とも連携しながら、施設のみんなや地域の方々が生き生きと生活するための拠点となることを目指していくそうです。

〈ケアホーム葛飾〉

2020年4月にオープンした介護老人福祉施設。120床の特別養護老人ホーム(ユニット型)、18床のショートステイのサービスを提供しています。地域交流スペースを設け、地域の方々にもご利用いただける憩いの場所を目指します。地域に根ざした施設として、利用者さんが住み慣れた地域で長く暮らしていけるように、全力でサポートいたします。

〒124-0001
東京都葛飾区小菅1丁目35−10
03-3602-5900


〈OUCHI〉

東京都足立区、大内病院近隣に立つOUCHIは、精神障がいを持つ人たちが地域に戻るためのサポートをする施設です。
退院後の一時的な住居としてのグループホーム、就労訓練・就労場所としてのお菓子・パン工房とカフェ、ピアサポートや当事者研究などの各種ミーティングを行うための交流スペースを持っています。
どんな人にとっても孤独はつらいものです。寂しくなったり不安になった時にいつでも、話ができる仲間がいる場所。それがOUCHIの目指す場所です。OUCHI CAFEでは、栄養満点で体に優しいごはんやカフェメニューをお楽しみいただけます。ぜひお気軽にお立ち寄りください。

東京都足立区西新井5-18-14
OUCHI HOME/03-6803-1758
OUCHI CAFE・KITCHEN/03-6803-1755
営業時間:月〜金曜 12:00〜16:00

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