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移動販売・移動図書館がもたらす日常の楽しみ、人との交流(前編)

平成医療福祉グループでは、ミッション「じぶんを生きる を みんなのものに」を掲げています。ミッションを実現するための行動指針(アクション)の一つに「個人の意志とその人らしさを尊重する」(※)があり、この指針に沿って、利用者さんが生活のなかでの楽しみを増やすことを目指す取り組みをお伝えします。

今回ご紹介するのは「移動販売・移動図書館」を導入する介護施設の取り組みです。こうしたサービスが利用者さんの日常生活にどのような影響をもたらすのか、また、施設と地域との間にどのようなつながりを生むのか、前後編に分けてくわしくお伝えします。

前編では「ケアホーム足立」(東京都足立区)の移動パン販売と、「ヴィラ町田」(東京都町田市)の移動図書館の実施例をお届けします。

※: グループサイト参照


ケアホーム足立 食の楽しみを広げる「キッチンカー 定期移動パン販売」

介護老人福祉施設「ケアホーム足立」では、「コミュニティプラットフォームあだち」(※1)が主催するキッチンカー「ジモカフェ」(※2)による、パンとコーヒーの定期移動販売を2022年1月より導入しています。月に2回(※3)、同施設の駐車場にキッチンカーが訪れて、利用者さんはもちろん、地域の方も商品を購入されています。

現在は新型コロナウイルス感染症対策のため、商品の購入は利用者さんに代わって職員が行っていますが、感染状況が落ち着けば、利用者さんもその場で直接購入いただくことを想定しています。いずれこの場が、地域とのコミュニケーションを深める空間となることを目指しています。

2022年1月のスタートから、商品の完売が頻発する盛況ぶりで、利用者さん・職員から大好評とのこと。施設のなかにいても、多くの方が、この日を楽しみにされています。

※1:コミュニティプラットフォームあだち

障がいのある方が働くことを支援する目的で設立した特定非営利活動法人WEL’Sが、足立区内に開所した事業所です。近年多様化している支援ニーズに対応するため、地域における既存の福祉サービスや人と人、人と資源、人と情報をつなげる拠点として機能し、地域住民や専門職種間の理解促進に取り組んでいます。

※2:ジモカフェ

コミュニティプラットフォームあだちが行ったアンケート調査や行政からの聞き取り、コミュニティプラットフォームあだちの運営協議会を通じて把握した買い物ニーズを鑑み、キッチンカーで足立区内の高齢者施設を中心にパンやコーヒーを販売。商品は障がい者支援事業所で製造され、同事業所の障がいのある方が販売を行っています。

※3:毎月2回、第2・第4火曜日を基本として実施。

販売するパン工房

竹の塚ひまわり園

綾瀬なないろ園


キッチンカーが到着すると、職員や地域の方が集まり、その場は和やかな雰囲気に包まれます。


一人ひとりに平等に、日常の楽しみを増やしたい

キッチンカーは、足立区内の他法人と連携して、コロナ禍でも継続的な地域公益活動を行うことを目的に導入されましたが、これはもとより、安田 由美子施設長が強く抱いていた「利用者さんの食の楽しみをもっと広げたい」「利用者さんが自分で食を選べる機会を作りたい」という想いとも合致した取り組みだったそうです。

菓子パン類は、施設内の食事で提供されることはほとんどないため、安田さんは「もし自分が施設で生活していたら、菓子パンを食べたくなるかもしれないな」と日ごろから思っていたとのこと。キッチンカーの導入によって、利用者さんは普段とはひと味ちがう「食」に触れられるようになり、自分で「食を選ぶ」機会も生まれたそうです。

商品は、菓子パン・総菜パンを中心に、焼き菓子など約30種類が用意されます。

また、利用者さんのなかには、食事制限や摂食・嚥下(えんげ)機能の関係で、どうしても販売されるパン類を楽しめない方もいますが、ケアホーム足立では「一人ひとりに楽しい時間を、平等に提供する」ことを方針とし、そういった方にも食を楽しんでいただけるように努めています。

例えば、施設内では食事レクリエーションとして、味やトッピングを自身で選べる「アイス屋さん」を実施するなど、職員がアイデアを出し合い、別の形で食を「平等に」楽しめる機会を作っているそうです。

今後もケアホーム足立では、利用者さん一人ひとりが生き生きと日常を過ごせるように、外部と連携した取り組みの導入を積極的に進めるとのことです。


〈ケアホーム足立〉

介護老人福祉施設ケアホーム足立は、デイサービス・ショートステイ・特別養護老人ホームの三事業所を運営している施設です。都心に程近い緑の多い環境の中で利用者さんの自立した生活を支援し、身体機能の回復・生きがいづくりをお手伝いいたします。

〒121-0836
東京都足立区入谷1-8-15
03-3853-6800


ヴィラ町田 知的好奇心を高める「移動図書館」

介護老人福祉施設「ヴィラ町田」では、2011年の開設当初から「移動図書館」を導入しました。もともと町田市立図書館が、市内の図書館から離れた場所に住む地域の方向けに実施しているサービスで、図書館の本を約3,500冊積んだ「そよかぜ号」が、市内60カ所を巡回するなかの1地点として、ヴィラ町田にもやってきます。

移動図書館は毎月、隔週火曜日の朝10時に施設エントランス前のスペースにやってきます。利用者さんのなかにはそよかぜ号が来る前から返却する本を抱え、楽しみにしながら待つ方もいるとのこと。毎回10名前後の利用者さんが、職員に付き添われながら集まり、本の貸し出し・返却が実施されています。どの方も、毎回10冊ほど借りても2週間で読み切ってしまうという、熱心な読書家ばかりだそうです。

本の貸し出しは、事前に記入した注文書を図書館スタッフの方に渡せば、次回運んできてもらえる仕組みとなっており、シリーズなどの続き物を注文する方が多いとのこと。もちろん、その場でも選べるので、本棚から1冊ずつ手に取って吟味する方や、図書館スタッフにおすすめを教えてもらいながら本を選ぶ方もいます。

図書館スタッフは毎回同じ方が来られるため、利用者さんとも顔なじみになり、今では読書の好みも大体把握されているそうです。ヴィラ町田に限らず、巡回する介護施設では、歴史分野の本や写真集、また読みやすさから大活字の本が好まれているとのことでした。


「読書」から生まれる目標と知的な楽しみ

小林 清子施設長の話によると、移動図書館の滞在は約30分と短い時間ではあるものの、このひとときが、本好きな利用者さんの生活において重要な位置を占めているそうです。

利用者さんにとって、移動図書館の訪問は、2週間後までに本を読み切ることを目指したり、次に借りる作品に想いをはせたりと、知的な楽しみを維持できる貴重な機会となっているとのこと。また、外に出て風に当たり、図書館スタッフと会話を交わすことは、気分転換にもつながっているそうです。

ヴィラ町田では、移動図書館のほかにも、定期的な移動パン販売や移動売店も導入しています。今後も利用者さんの生活に潤いをもたらす取り組みを模索しながら進めていくとのことです。

本を探しながら、図書館スタッフの方と会話を弾ませる様子。

「本は私にとってケーキのようなものなの」と話された利用者さんもおり、生活における「読書」の重要性がうかがえました。

〈ヴィラ町田〉

心豊かに、健康に過ごしていただくための理想の環境がここにあります。
光を多く取り入れた明るい施設で心のこもったお世話をいたします。
家庭的な雰囲気の中で、利用者さんの自立した生活を支援し、
身体機能の回復、生きがいづくりのお手伝いをさせていただきます。

〒194-0211
東京都町田市相原町4391-7
042-783-0900


本記事は後編へ続きます。

移動販売・移動図書館がもたらす日常の楽しみ、人との交流(後編)


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